山形県の小野川温泉 鈴の宿登府屋旅館の遠藤直人社長は、高齢者のお客さんの「エレベーターから客室までが近くていいね」という言葉で、小規模な宿ゆえの移動のスムーズさがメリットなのだと実感し、誰にでも優しい「ユニバーサル旅館」に熱を入れるようになったそうです。
現在、全客室13室のうち、5室がユニバーサルデザインになっています。
特筆すべきは、2017年に改修した「滑り台式の貸切風呂」です。
広い脱衣所には、寝ころびながら着替えができるようにとシングルベッド程の大きさの台があります。脱衣所から引き戸を開くと、その台と繋がっているタイル張りの湯船の縁があります。台から縁伝いに移動すると、縁にはなだらかな傾斜がついていて、そのまま滑っていくと温泉に浸かることができるお風呂です。
さらに10か所からお湯が出るシャワーも設置されていますので、髪や身体を洗っている間に、全身が冷えてしまうこともありません。
着脱式の手すりと浴場専用車いす「シャワーキャリー」、そして足湯ができるフットバスも常備されています。
男性の露天風呂もバリアフリー対応です。
年に数回、プロの落語家を招いて、宴会場で落語会を実施
2021年には日本初のバリアフリー貸切混浴スチームサウナ付きスィートルームを増設しました。廊下からサウナ室への動線やトイレがバリアフリーで、「シャワーキャリー」のままスチームサウナを利用できます。水風呂はなく、水シャワーを浴びて温冷交代浴を楽しむというサウナです。
こうしたハードの整備を重ねながら、一方で老若男女、車いすユーザーも一緒に楽しめるように、年に数回、プロの落語家を招いて、宴会場で落語会を実施しています。
鈴の宿登府屋旅館は10年以上にわたって、車いすのお客さんを500人、ご家族も含めると1500人をもてなしてきた経験豊富な宿です。この圧倒的な経験値により、私も安心してご案内することができます。
山崎まゆみさんのプロフィール紹介
山崎まゆみ 温泉エッセイスト・跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学・観光取材学)
現在33カ国の温泉を訪問。観光庁や地方自治体の観光政策会議に有識者として多数参画。
ユニバーサルツーリズムについての活動は、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020評価会議」、観光庁「ユニバーサルツーリズム促進事業」など、様々な委員を歴任。
NHKラジオ深夜便で「バリアフリーで温泉を楽しむ」に出演中(毎月第4水曜日)
東京新聞で「バリアフリーで行こう!」連載中(毎月第2・4水曜日掲載)
著作には『行ってみようよ! 親孝行温泉』は「バリアフリー温泉で家族旅行」のシリーズ第3弾。この他、温泉や旅にまつわる書籍『宿帳が語る昭和100年』など多数。
4月8日には新刊『おいしいひとり温泉はやめられない』(河出文庫)を発売。