時を超える城壁都市:ヨーロッパに息づく“石の記憶”をたどる【StudioJTB】

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時を超える城壁都市:ヨーロッパに息づく“石の記憶”をたどる
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公開日:2025.11.30
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更新日:2025.11.30
ヨーロッパの旅の醍醐味、それは中世の城壁都市を訪れる瞬間に凝縮されています。 目の前にそびえる分厚い壁と威容を誇る塔は単なる歴史の遺産ではありません。 かつて外敵から街を守り抜いた防御の要であり、何世紀もの間そこで暮らした人々の記憶を石肌に刻み続けてきた壮大な物語の語り部です。 城門をくぐる時、そびえ立つ石壁にそっと手を触れてみてください。 そこから伝わる重み、ひんやりとした冷たさこそが「石が語る物語」の序章です。 さあ、あなたもヨーロッパに息づく雄大な“石の記憶”をたどる旅に出かけましょう。
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信仰と石の街:アビラ(スペイン)

マドリードから列車で約1時間半、カスティーリャ・イ・レオン州の古都アビラは、まるで巨大な石の冠を戴いたかのようです。 ヨーロッパで最も保存状態が良いと言われるその城壁は、全長約2,500m、87もの塔が連なり、街全体を完璧な円で抱きしめています。 この城壁は上へと登って実際に散策することができます。 石の遊歩道を一歩一歩踏みしめるたびに風が中世の香りを含んで頬を撫で、レンガ色の屋根が続く街並みがはるか遠くまで見渡せます。 街の外、少し離れた丘の上にあるクアトロ・ポステス展望台に立てば、その城壁の全景がまるで巨大な模型のように目の前に広がります。 特に、夕日が石壁を深紅に染め上げ、やがて無数のライトが城壁を浮かび上がらせる夜景は格別。 厳粛な空気に満たされたこの街は聖女テレサゆかりの地。 石の壁は何世紀にもわたる信仰の熱を今も内に秘めているようです。

時が層をなす街:チェスター(イギリス)

リバプールから電車で約40分、ロンドンからも列車で約2時間でアクセスできるチェスターはイングランドの歴史を体現する街です。 街を囲む城壁にはローマ時代の遺構が今も息づいており、石の壁を歩けば古代ローマと中世の歴史が折り重なる「時が層をなす」感覚を覚えるでしょう。 城壁の上に輝くのは街のシンボル、華麗なイーストゲート・クロック。 ヴィクトリア女王即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)を記念して1897年に建造され、1899年に時計が追加されました。ロンドンのビックベンに次ぐ人気を誇ります。 チェスターの真骨頂は街の中心部にあるザ・ロウズ(The Rows)というユニークな二層構造のアーケード街。 石造りの土台の上に木組みの建物が重なり、上下二層の遊歩道でショッピングが楽しめます。 石畳の通路、木骨造りの可愛いらしい家々、そしてどこからか聞こえてくる時計台の鐘の音。 まるで中世の挿絵から飛び出したような街並みは、一歩路地に入るたびに、旅人を幸せな迷子にさせてくれます。

隕石のクレーターに生まれた丸い街:ネルトリンゲン(ドイツ)

ドイツのロマンチック街道を旅するならネルトリンゲンは外せません。 この街は約1500万年前の隕石のクレーターの底に、奇跡のように円を描いて築かれました。 街全体をぐるりと囲む完全な円の城壁こそがその証です。 上空から見下ろせば完璧な円形が目を引くこの街は、地上を歩くとその丸みがそのまま旅の動線になります。 5つの門と12の塔が点在する城壁の上には、一周できる散歩道が整備され、城壁の内側には中世の面影を残す三角屋根の家々がびっしりと並んでいます。 その完璧な円形とどこか懐かしい風景は、とある人気アニメーション作品の世界観のモデルにもなったほど。 ミュンヘンから鉄道で約2時間。 歴史とSFロマンが交差するこの円い街をぜひご自身の足で一周してみてください。

ヨーロッパ最大級の要塞都市:カルカソンヌ(フランス)

フランス南部に突如として出現する巨大な石の塊。 それがカルカソンヌの要塞です。 世界遺産に登録されたこの城壁は中世ヨーロッパ最大級の要塞都市であり、その威容を前にすれば誰もが騎士の時代へと思いを馳せずにはいられません。 要塞を守るのは二重の城壁と52の塔。 その全長は約3kmにも及び、そのスケール感はフランス国内でモン・サン=ミッシェルに次ぐ年間来訪者数を誇ることからも伺えます。 城壁内には石造りの通路、お土産店、そしてホテルやレストランも点在し、歴史の中に泊まるという非日常の体験ができます。 トゥールーズからTERで約50分。 城壁に到着する前からその巨大な影に心が高鳴ります。 そして夕暮れ時、城壁がオレンジ色に染まり、やがて無数の灯りでライトアップされる光景は息をのむほどの幻想美。 石の壁が夜の闇に浮かび上がり、まるで中世の夢がよみがえったかのような壮大な旅情を与えてくれます。
ヨーロッパの城壁都市はただの観光名所ではありません。 それは人々が守り、愛し、誇りとしてきた物語を、何世紀もの時間とともに凝縮させた生の遺産です。 ひんやりとした石の感触、石畳を歩く足音、城壁の上で肌を撫でる風――。 あなたもこの石の記憶をたどる旅で、自分だけの物語を見つけてみませんか?
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