旅の輪で広がる、人生の彩り
毎週水曜日更新添乗員や企画担当者が旅行に限らず様々なテーマで、日常のコラムを投稿!
南イタリア ポンペイの遺跡
未知の驚異が眠る町 ポンペイ
まだまだ発掘作業の続くポンペイ遺跡

「恋するココロを伝えるのに魅力的な詩がしばしば引用された・・。」
こういえば聞こえはいいがともすればロマンチックを通り越して、もはやストーカーの域?!(笑)
どんな状況でも、たとえそれが困難な状況であれポンペイの男たちは魅力的な詩をひねりだした。
恋人との再会に心急ぐ男はラバ追いが目の前で立ち止まって水を飲むことさえ我慢ならなかった。
『お前が恋の炎を燃やすことがあれば、ラバ追いよ、お前とてウェヌスに会うために道を急ぐであろう。私はあの美しいひとが大好きなのだ。さぁ、お願いだ。ラバを追え。水は飲み終えたのだから。さぁ、行こう。手綱を取り、私をポンペイへ運んでおくれ。愛しいひとのいるあの街へ。』
恋する術は言わば生きる術。
『恋するものに万歳!恋することを知らぬものはくたばってしまえ。恋の邪魔立てをするものは二度くたばってしまえ!』
講談社・ポンペイ奇跡の町(ローベル・エティエンヌ著)
ここまで極められたらたとえ大噴火の溶岩流に呑み込まれてこの世におさらばしてしまっても本望と言えるだろう。
しかしこのネットリくどくて濃い男たちに言い寄られ続けた女たちは、逃げ場がなくてさぞかしキツい思いをしていたはず。(笑)
それにしてもローマ世界においてポンペイほど『エロス』がふさわしい町は他にはない。
2年以上の長い修復期間のあと、満を持して、再オープンした「ルパナーレ」。それからもう早や十数年。
壁のフレスコ画がオリジナルの色彩を取り戻しより一層鮮やかに甦った。
夏のオンシーズンは連日、ちょっとした長蛇の列。
港町、商人の町にはつきものの娼婦宿。
オリエント、ギリシャの下層階級の女たちはワイン 8 本分の値段で買い取られかいがいしく朝から晩まで働く。
10室ほどある小部屋にはほとんど太陽の光は届かず、石のベッドに麻布を折りたたんだような質素なマット。
2階は若干豪華なつくりの上客用の部屋。

バルコニーから娼婦達が道行く男たちに、まるで雌狼(ルーパ)が遠吠えをして自分の居場所を伝えるかのようなそんな形相からこの名がついたらしい。
客の男たちは外国人であり当然、娼婦とは言葉のやり取りができない。
ならばサービスの内容を絵で示せばいいではないかと、単純明快な答え。
しかし 2000 年前の春画とは思えぬほどの完成度の高さ。
フレスコ画は幾度となく様々な場所で鑑賞しているが大噴火の際の何百度という高熱にも溶けることなくオリジナルの画像がしっかり残っている。
この驚異的な耐久力にはいつ訪れても感嘆してしまう。
古今東西、人間の思考レベルなんてさして変わるわけでもない。所詮同じと言ってしまったらそれまでだけど。
遺跡を丹念に見続けていくと食、遊、性・・。
ここまで貪欲に快楽を追求し続けた彼らのパワーの源は一体、何だったのか、あらためて考えさせられる。


1階部分の壁画。高熱に耐え2000年の長きにわたりその構図と色合いを維持してきた。
未知の驚異が眠っている町、ポンペイ。
皆様も遺跡の中をお歩きいただき2000年前の享楽の世界を想像しながら思いを馳せてみませんか?

いつもの日常空間から少し離れて、のんびりとゆったりした気持ちで一緒に非日常を楽しみましょう!



