
とっておきの世界遺産を訪ねて
- ヨーロッパ
- アイスランド/スペイン/イタリア/ポーランド/トルコ/アメリカ/ブラジル
- シンクヴェトリル/ヴァトナヨークトル/セゴビア/アビラ/ローマ/ピサ/クラコフ/イスタンブール/イエローストーン/レンソイス
- #世界遺産
- #絶景
- #秘境
パリも、マドリードも、ロンドンも魅力的ですが映画の舞台として皆さんがまず、真っ先に思い浮かべるのはローマ。やはり「ローマの休日」(1953 年,Roman Holiday)ではないでしょうか。王女アンがローマ滞在中に宮殿を抜け出し新聞記者ジョーと出会うはかない恋物語。半世紀以上も前の作品ながら、その魅力はいささかも色あせず、世代を超え愛され続けています。中でも印象的なのがあの、「真実の口」のシーン。まるで物語の中に入り込んだような気分でつい手を差し入れてみたくなりますよね。ジョーク半分に手を入れるのもよし、ローマの歴史の一端に触れるのもまたよし、ですね。
そして次の名シーンは、スペイン階段。オードリー・ヘプバーンがアイスクリーム片手に腰かけたこの場所は、まさに映画の象徴的ロケーション。ローマにあるのにスペイン?どうやらその昔、この階段のすぐ隣にスペイン大使館があったことに由来するとか。階段での飲食、残念ながら今は禁止されているんですよね。それだけこの場所が、世界中の観光客に愛されている証とも言えるでしょう。
「ローマの休日」が私たちに見せてくれたのは、名所だけではありません。どこを切り取っても絵になるローマの街並みそのものが、映画のもう一人の主役とも言える存在です。石畳の道、噴水の音、時を重ねた石造りの風格ある建物たち。それらすべてが映画のワンシーンのように感じられるひととき。特に夏のローマは日没が遅く、夜9時でもまだ明るい空なんてことも。観光を終えた後の静かな夕暮れ、ふと足を伸ばしもう一度この永遠の都を歩いてみる。そんな贅沢もまた、ローマの旅ならではです。
古代ローマの剣闘士(グラディエーター)マキシマスは単なる剣闘士ではありませんでした。彼の過去を紐とくと、ローマ皇帝アウレリウスの後継者として指名される寸前の将軍だったのです。それが皇帝の実子コモドゥスに裏切られ、家族も殺され自らも、奴隷として売られた過去を引きずりながら剣闘士として復讐を図ります。映画タイトルはそのままの「グラディエーター」(2000年,Gladiator)として公開され大反響を呼びました。物語のクライマックスとなる舞台は、ローマの象徴コロッセオ。最新 CG によって再現されたその姿は、当時の栄華と暴力のリアリティを圧倒的スケールで蘇らせました。そして現代の私たちもまた、この巨大円形闘技場の内部を静かに歩き、悠久のローマと時を越え向き合うことができるのです。
「グラディエーター」では、古代ローマの政治と権力の中枢だったフォロ・ロマーノも重厚な背景として印象的に描かれます。コロッセオのすぐ隣、帝政ローマの精神と思想が息づくこの場所には、神殿や元老院跡が静かに佇みその歴史を紡いでいます。こうした場所を今でも現実に訪れることが出来るのがローマの凄いところですね。歴史の回廊とでも言えばいいのでしょうか。私は仕事がお休みの週末、大通り沿いのこの遺跡を見ながらお散歩ウォーキング。この先にあるコルソ通りでショッピングしたり、ジェラートいただいたりして楽しんでいます。皆さんも是非!
前作ダ・ヴィンチ・コードに続くダン・ブラウンシリーズ、「天使と悪魔」(2009 年、Angels & Demons)。トム・ハンクス演じる主人公はハーバード大学の宗教学者ロバート・ラングドンです。物語はローマ教皇の急死と、それに伴うコンクラーベと呼ばれる教皇選出会議の開催からはじまります。4人の次期教皇候補の枢機卿が何者かに誘拐され、バチカンには「イルミナティ」を名乗る謎の組織からの警告が届きます。さらに正体不明の巨大破壊エネルギーが盗まれ、それがバチカンに仕掛けらたという知らせにローマ中が震撼するのです。そしてラングドンは、背後に潜む古代の教団イルミナティの陰謀を解き明かすためローマにある「聖なる四大祭壇」の探索を始める、こんな緊迫のストーリーが展開されます。かつての古代競技場ナヴォーナ広場。ベルニーニの傑作・四大河の噴水を囲むこの美しい空間で激しいアクションが展開され、観光客に紛れ襲撃者が現れるスリリングな場面も描かれます。
そして巨大ドームと天窓から差し込む自然光が静謐を生み出す2000年前のパンテオンでもさらなる悲劇が!
物語の終盤はバチカンの中枢へと収束していきます。鍵を握るのはかつては要塞だったサンタンジェロ城。テヴェレ川沿いにそびえるこの荘厳な円形建築には、バチカンと外部をつなぐ回廊が設けられ、それは現存し今も目にすることが出来ます。劇中では秘密の通路の舞台で、緊迫のクライマックスを迎えます。
そして最終章はカトリックの総本山、サンピエトロ大聖堂。壮大なドームと広場が空撮で印象的に映し出され、爆発の危機を迎える緊迫の場面がここで展開されまさに、神の都の重厚さを体感します。バチカン内部は撮影許可が下りなかったため、スタジオセットとCGが駆使されていますが、その映像美は圧倒的で、天使と悪魔はまさに歴史の迷路を旅する名作と言えるでしょう。
今回は3つの映画を取り上げましたがこれ以外にも、たとえばマルチェロ・マストロヤンニの「甘い生活」(1960年,La Dolce Vita)、ロベルト・ベニーニの「トゥ・ローマ・ウィズ・ラブ」(2012年,To Rome with Love)、トニ・セルヴィッロの「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年,La grande bellezza)などの素晴らしい名画が揃っていますよ! まだ観ていない方。映画が先か、旅が先か。ゆっくりお悩みくださいね~