
連泊が生み出す旅の魅力
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海外旅行のツアー企画に携わる過程で、世界各地の実にさまざまな世界遺産と出会ってきました。今日はその中でも「ここは訪れる価値あり」と私が思う世界遺産をいくつかご紹介したいと思います。
まず世界遺産とは、ユネスコが定めた「人類が共有すべき文化的・自然的に価値の高い宝物」であり、2024年7月現在1,223件(文化庁調べ)が登録されています。文化遺産・自然遺産・複合遺産の三種類に大別されますが、紛争や災害などで保護が脅かされると危機遺産として指定されることもあります。ユネスコという世界基準の枠組みでの認定のため、私たち日本人の感覚では少しピンとこない遺産も正直なところ含まれています。
よって今回は、「日本人が旅行で訪れて面白そう、あるいは感動を呼びそうな世界遺産」に絞ってお伝えしたいと思います。
ご案内する世界遺産
まずはアイスランドです。ヨーロッパと北米の間に広がる大西洋に浮かぶ島国ですがこの「ヨーロッパと北米の間」という表現こそ、この国の特徴をよく表していると思います。
実は北米大陸とヨーロッパ大陸を形成するそれぞれの海底プレートが海中で衝突し海の上にせり上がってできた島国、それがアイスランドで右と左では大陸が違う、すなわち「地球の割れ目」という地点が国のあちこちに存在するんです。下の写真をご覧ください。何の変哲もない一本道に見えますが、ここがまさにその割れ目。さて、右左どちらがヨーロッパで、どちらが北米でしょうか?そしてこの境界、現地の言葉で「ギャウ」って呼ぶんです。なんだか面白いネーミングでしょ!
同じアイスランドからもう1か所、ヴァトナヨークトル国立公園の「ヨークルスアゥルロゥン氷河湖」にも目を向けましょう。名前を覚えるのはイチイチ大変なんですが、景観の方は一度見たら忘れられないほどの迫力です。氷塊がぷかぷかと浮かぶ神秘的な湖を、ボートで縫うように進む氷河クルーズがここでの人気。ここまで行ったなら皆さんも是非、体験してくださいね。
お次はブラジルです。地図で見ると南米大陸の右肩付近にあるレンソイス。雨季に白砂漠へ降り注いだ雨が飽和点を迎え、水を吐き出し砂の狭間に出現する青いラグーン。これぞまさに奇跡の景観です。雨季の終わりを迎える6月頃から乾季が始まる8月頃までのわずかの期間、サラサラの白砂と青の水面が作り出すコントラストは圧巻!
いらっしゃる機会があれば是非、ここでは小型機の遊覧飛行にトライしてください。上空からしか見えない景色に出会えます。
気に入ったらそのまま砂漠のプールでひと泳ぎなんてことも可能です。但し、更衣室やシャワーなんてものはありませんよ。
さらに足を伸ばしやすい場所として、アメリカのイエローストーン国立公園にも注目しましょう。ほぼ定期的に噴き上がる間欠泉「オールドフェイスフル・ガイザー」は迫力満点です。近くで目を凝らしながら、その時の到来をじっと待つのもワクワクの時間ですね。
そして、万華鏡のような色彩を見せる「グランド・プリズマティック・スプリング」では、自然の神様が造形した神秘的な色彩に言葉を失います。余計な説明など気にせずとにかく、ゆっくり眺めじっくり見入ってください。ここが選ばれた特別な土地であると感じるはずです。
ご案内する世界遺産
ここからは人の手による巨大建造物をご紹介します。
ピラミッド、モンサンミッシェル、万里の長城、タージ・マハルなど、世界には想像を絶する世界遺産が目白押しですが、今回はスペインの2か所を選びました。どちらも首都マドリードから日帰り圏内ですが、一泊して朝夕の風景を楽しむのもおすすめです。
まずはセゴビアの水道橋。どうですかこの堂々たるアーチ。この上を水が流れていたなんて驚きですよね。しかも2000年前からずっと、そして今もこの街の中心に立ち続けているのです。その歴史を想像するだけで、息をのむ迫力があります。
もう一つはアビラの城壁。こちらはおよそ1,000年前。現代のような重機もない時代に、高くて重厚な城壁で街を丸ごと囲んでしまおうという発想そのものがとにかく壮大です。そして今も、この城壁は上に登って歩くことが出来るんですよ。ヨーロッパで最も保存状態の良い城壁のひとつに数えられるとその現場に立てば、かなたの丘陵をも越え延々続くその姿に言葉を失いそうです。
続いて舞台はイタリアに移ります。ローマ時代の代表的な建造物といえばコロッセオが有名ですが、同じくらい凄いのがこちら「パンテオン」。2000年前に、どんな計算技術でここまで完璧な構造を作り上げたのか想像もつきません。
内部は今も現役の礼拝堂として使われていて、天井に開けられた真円の穴から光が差し込む様子は、まるで神秘のベールをかぶせたかのよう。荘厳な雰囲気が訪れる人を包み込みます。
そして時代は下がりおよそ700年前のピサへやってきました。
鐘楼を作り出したら傾きはじめた?「ん、、、どうしよう? エエイ、このままやっちまえ!」こんな乱暴な会話でも交わされたのでしょうか。ともかくも鐘楼は出来上がり、その傾きのおかげで今や知名度No.1の斜塔として名を馳せます。真っ白な大理石の複合建築全体として見ていただくのがベストでしょう。ここはフィレンツェから約1時間の距離にあります。
そしてピサへ来たなら、絶対忘れてはならない写真。ハイ、お決まりのポーズで「パチリ」
ご案内する世界遺産
さて、ここでは2つの世界遺産を対比してご案内しましょう。
まずこちら、トルコ・イスタンブールのブルーモスクです。内部を埋め尽くす2万枚以上の青いイズニックタイルと、ステンドグラス越しに差し込む柔らかな自然光が幻想的な空間を作り出しています。
優美なアーチと6本の大理石の柱が織りなす光景は、荘厳でありながら静謐。その場にいるだけで、一旦信仰は横に置いといても、イスラムって凄いなぁととにかく素直に感動してしまうパワーがここにはあります。
一方、ローマ・バチカンのサン・ピエトロ大聖堂も見逃せません。カトリック総本山であり、ミケランジェロの傑作など芸術の粋が詰まった飛びっきりの聖地です。イスタンブールのブルーモスクと並べて考えると、同じ神への祈りが形を変え、比類なき建築を生み出してきたことに感慨深さを覚えます。こうした対比も世界遺産の面白い楽しみ方かもしれません。
ご案内する世界遺産
なんと言っても世界遺産は1,223件もあります。日本人に馴染み深い場所だけでも相当な数になりますよね。しかしすべての世界遺産が「魅力にあふれた」場所かというと、必ずしもそうではありません。少し異なる側面を持つ遺産も存在することを最後にお伝えしたいと思います。
こちらの写真は、ポーランド南部・クラコフ近郊にあるアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所跡です。もはや説明は不要でしょう。人類の愚かな行い、その過ちを二度と繰り返してはならぬという戒めと警鐘を我々の記憶に留める唯一無比の世界遺産もあるのです。
私の世界遺産紹介、いかがでしたでしょうか。いずれも訪れる価値があり、見て、感動して、考えさせられ、そして振り返る価値ある場所です。是非、地球上の各国に点在するこれらの宝物を1人でも多くの方に訪れていただき、その真価を体感して頂ければ、旅を企画する者として望外の喜びです。