
世界無形文化遺産 ピッツア・ナポレターナ
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皆様、イタリアの中北部の小都市、クレモナをご存じでしょうか?
クレモナは、イタリア北部ロンバルディア州にある都市で、特にバイオリン製作の街として世界的に有名です。歴史的には、15世紀以降、工房での製作が始まり、17世紀にはアントニオ・ストラディバリやアンドレア・アマティなどの名工がこの地で活動し、現在でも80を越える多くのバイオリン工房が存在しています。
クレモナは、世界中の音楽家や研究者を惹きつけ、バイオリン製作の聖地としての地位を確立しました。クレモナバイオリンの音色は、豊かで奥ゆきと深みがあり、非常に繊細で美しく特に、アントニオ・ストラディヴァリやジュゼッペ・ガルネリ・デル・ジェズが製作したバイオリンは、音の透明感と響きの持続性が特徴です。これらの楽器は、演奏者の技術によって多彩な表現が可能で、まるで人間の声のように内に秘めた感情を伝える力を持っています。クレモナの職人たちは、木材の選定や加工技術、そしてニスの調合に至るまで、細部にこだわり抜いて製作します。そのため音色は他の地域で製作されたバイオリンとは一線を画すもので、名工の楽器で演奏することは音楽家の憧れでもあり誇りでもあるのです。
バイオリンには魂柱(こんちゅう)というものがあります。この魂柱は、外側からは見ることができないのですが、字のごとくバイオリンの「魂の響き」を表現する中核で、無くてははならないものです。接着されていない楽器内部の表板と裏板の間に立てられた小さな円柱状の木製パーツで、弦の振動を表板から裏板へと伝える役割を果たし楽器全体の響きを生み出します。 この響きが発生することで初めて音が生み出されます。まさに「音の生命線」で、魂柱と呼んだのは あの文豪 夏目漱石だそうです。倒れた魂柱を補修したり、またその位置や材質は音色に大きな影響を与え、熟練した職人が調整することで、バイオリンの性能を最大限に引き出し透明感あふれる感動的な音色を生み出すのです。
代々に渡り受け継がれてきたバイオリン製作の職人技。この伝統的な職人の技術が2012年ユネスコの無形文化遺産に認定されています。
バイオリンに触れたことがなくても、まったく縁がないですという方も工房という特別な空間でマエストロ(巨匠)のお話しを聞いているうちに、なんだか一瞬でも弾いてみたくなってくるそんな気分にさせてくれるかもしれません。私も最初は全くの無知でしたがクレモナに何度か訪れ、バイオリンについて少しずつ勉強していくうちにこの楽器の魅力に惹かれた一人です。
皆様も普段はなかなか行けないような場所で普段と違った体験をされ、新たな発見をして本当の旅の醍醐味を実感していただきたいな、というふうに思っております。