
トラベル&ライフ2026年2-3月号の特集撮影で台湾を巡ってきた。日本から近く、食事も美味しく、それでいて異国情緒に満ちたこの国は、変わらず多くの人が訪れていた。何度も訪れた場所でさえ、歩くたびに新しい発見や喜びがある。誌面では収まりきらなかった魅力を写真とエッセイで紹介していく。
士林市場の「美食区」は、綺麗に改装され清々しいフードコートへと姿を変えていた。かつての喧騒と雑多な空気に懐かしさを感じつつ、新しく生まれ変わった活気もまた心地良い。喉を潤す台湾ビールや変わらぬ味の屋台飯。形は変われど、今も旅人の胃袋を掴んでいる。
メイン通りは人が溢れかえっていたが、人通りの少ない路地に入ると静寂に紛れてハート型のネオンが灯っていた。小道にある予期せぬ出会いや感動があるから旅の歩みはいつまでも止められない。
縁日のような熱気に包まれた夜市では、輪投げや射的、ボール投げなどのゲームが数多くある。そこで目を引いたのは "麻雀ビンゴ" と言われるもの。対戦相手はお店の人やその場に並ぶ人なのだとか。麻雀を使ったゲームは台湾らしい気がした。
一歩足を踏み入れるとお香の香りが漂い、幾百もの赤提灯が灯る静域があった。士林夜市の喧騒を背に佇む寺院「慈誠宮」。一心に祈りを捧げる人の姿を見て、たかぶっていた心が落ち着いていく。歩き疲れたタイミングでお参りして、心も癒されていった。
開運の聖地「龍山寺」で最強のクジを引き当てた。古い薬箱のような棚から取り出した1番クジ。日本語訳を辿れば「天地が生まれるような素晴らしい時期」とある。 "おみくじの有効期限" を気にしつつ、その幸運をそっとカメラバッグに忍ばせた。
日が沈む前、九份にある展望台から景色を眺めていた。ここから見る風景は初めてのはずなのに、なぜか既視感を覚えた。「あ、しまなみ街道に似ているのかも」と、異国の風に吹かれながら自分の訪れた場所を思い出していた。
九份昇平戯院(ショウヘイギイン)の扉をくぐると、タイムスリップしたかのような気分になった。台湾の黄金時代を象徴する建物で、かつては千人ものお客さんを収容する映画館・劇場だったという。古き良き九份の記憶が、館内に息づいていた。
山間地帯にある九份の夜はそれなりに肌寒くなる。そうなると湯気の立つ屋台に自然と心も足も向かってしまう。タロイモ団子で作られた "台湾ぜんざい" と言われるあったかい汁の「芋圓(ユーユェン)」を食べると、心身ともにあったまっていった。
人気の場所は撮影目的の人だかりができていた。隙間を縫って自分もカメラを向けるが、ファインダーに飛び込んできたのはその景色を撮ろうとする無数の手。完成された絶景もいいが、旅の熱を感じる瞬間もたまらなく好きだ。
喧騒の傍ら、人混みを横目にまどろむ犬に目が留まる。観光地の熱気さえ、彼にとっては見慣れた日常なのかもしれない。行き交う人々をどこか達観して眺めている。旅先で出会う動物たちの無垢な気配はいつも優しい気持ちにしてくれる。
「台湾っていい。」人の温かさに触れ、共有する文化に安らぎながら、鮮やかな異国情緒も味わえる最高の場所。この地は何度訪れても新しい感動で包み込んでくれる。次に旅する時も、きっと楽しい出会いと景色が待っているはず。