
愛くるしい表情とかわいらしい花柄、素朴な佇まいのこけしは日本を代表する伝統工芸品だ。形態は球形の頭と円柱の胴、着物を着た女の子をモデルとした木の人形は、古くから多くの人々に愛されてきた。
ロクロ挽き 写真提供:宮城県観光戦略課
こけし製作に欠かせないのがロクロ挽きの技術だ。5世紀ごろ、木工用のロクロとその技術が大陸から日本に伝わった。そしてロクロを用いて椀や盆などの器を作る木地師(きじし)が育ち、8世紀ごろには高い技術が必要とされる「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」などが作られていた。その後も、ロクロ挽きの技法は日本各地に広がり、木地師たちは食器だけでなく、独楽(こま)やこけしといった子どもの玩具も作るようになった。
描彩 写真提供:宮城県観光戦略課
東北地方にもロクロ挽きの技術が伝わり、江戸時代末期の文化・文政(1804~1830)の時代に、宮城県でこけしが誕生したといわれる。さらに、東北地方には湯治客が多く訪れ、こけしが土産物として人気を集めたことから、各地の湯治場でその土地ならではの特徴を持つこけしが作られるようになった。その後明治の末年までこけしは人気を集めるが、大正期になる新興玩具が出て衰退。けれども趣味人が収集したり、民芸品、美術品として評価されるようになるなど、度々ブームを起こして注目されてきた。

鳴子こけし 写真提供:宮城県観光戦略課

遠刈田こけし 写真提供:宮城県観光戦略課
現在、東北の伝統こけしは11系統に分類されており、宮城県では、鳴子系、遠刈田(とおがった)系、弥治郎(やじろう)系、作並系、肘折系という5つのこけしが作られている。
鳴子系は頭がはめ込み式で、首を回すとキイキイと音が鳴る。胴は菊の花を書くのが一般的で、中ほどが細くなっている。遠刈田系は切れ長の細い目が特徴。胴は細くなで肩で、菊や梅を重ねたものが描かれている。弥治郎系は、頭頂にベレー帽のような色付けがされており、胴にはくびれがある。作並系は、頭頂に輪形の赤い飾り、胴は上下のロクロ線の間に菊模様が描かれる。肘折系は、鳴子系の形態と遠刈田の描彩様式が融合したもので、頭部は黒頭か赤い放射線、にんまりとした表情が特徴。胴模様は菊、石竹などが多く描かれている。これらの5つ系統のこけしは、昭和56年(1981年)6月22日に、「宮城伝統こけし」として国の伝統的工芸品に指定された。
弥治郎こけし村 写真提供:宮城県観光戦略課
宮城県内にある「日本こけし館」「弥治郎こけし村」「みやぎ蔵王こけし館」などのこけし専門施設では「宮城伝統こけし」をはじめとするこけしを紹介している。さらに各産地で全国のこけしを一堂に集めたこけしまつりやこけしコンクールも毎年開催。最も簡略化された美しい造形、可憐な姿をもつ「宮城伝統こけし」の魅力、目の前にするとなぜかほっこりと心温まる伝統工芸品の素晴らしさを今に伝えている。
日本こけし館 写真提供:日本こけし館