
今もなお、豊かな自然が残る北海道・北東北。紀元前13,000年頃から紀元前400年頃まで、先人たちは森や海、川の自然の恵みを持続的に採集・漁労・狩猟しながら定住し、自然や祖先を崇拝する精神文化を育んできた。この1万年以上にもわたる期間を日本では縄文時代と呼んでいる。当時の様子を今に伝えるのが世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」だ。これは、北海道に6つ・青森県に8つ・岩手県に1つ・秋田県に2つ、合計17の遺跡で構成される。
大平山元遺跡 全景 出典:JOMON ARCHIVES(外ヶ浜町教育委員会撮影)
縄文時代における定住の歴史は、ステージⅠ定住の開始(居住地の形成Ⅰa、集落の成立Ⅰb)、ステージⅡ定住の発展(集落施設の多様化Ⅱa、拠点集落の出現Ⅱb)、ステージⅢ定住の成熟(共同の祭祀場と墓地の進出Ⅲa、祭祀場と墓地の分離Ⅲb)という3つのステージ、さらにそれぞれが2つに小区分され、合計6つに分けられる。「北海道・北東北の縄文遺跡群」の遺跡はそれぞれが6つのステージに位置付けられ、定住生活の痕跡、さらには独自の文化を発展させ、農耕社会が始まるまでの過程を示している。
大平山元遺跡 土器片 出典:JOMON ARCHIVES(外ヶ浜町教育委員会所蔵)
大平山元遺跡(青森県外ヶ浜町・ステージIa)は、定住開始期前半の遺跡。遺跡からは、旧石器時代の終わりごろの特徴を持つ石器群とともに、土器片と石鏃(せきぞく)が出土。土器片は現在のところ北東アジア最古級。旧石器時代の移動しながらの生活から縄文時代の定住へと変化する様子を示す重要な遺跡だ。
三内丸山遺跡 土偶 出典:JOMON ARCHIVES(青森県教育委員会撮影)
特別史跡・三内丸山遺跡(青森県青森市・ステージⅡb)は大規模な拠点集落で、竪穴建物、掘立柱建物、土坑墓などが計画的に配置されている。大規模な盛土からは、日本最多の約2,000点を超える土偶をはじめ、膨大な量の土器や石器が出土。さらに、魚骨や動物骨、クリ、クルミなどの堅果類が出土しており、人々が自然資源を巧みに利用して暮らしていたことが分かる。
大湯環状列石 夏至の日没 出典:JOMON ARCHIVES
特別史跡・大湯環状列石(秋田県鹿角市・ステージⅢa)は、定住成熟期前半の祭祀遺跡。万座と野中堂、2つの環状列石があり、いずれも川原石を組み合わせた複数の配石遺構が二重の円環を形成し、それぞれに「日時計状組石」が配置されている。また、環状列石を取り囲むように、掘立柱建物、貯蔵穴、土坑墓などが同心円状に配置され、土偶や土版、土製品、石棒、石刀などの祭祀・儀礼の道具を数多く出土している。
大湯環状列石 野中堂環状列石 出典:JOMON ARCHIVES
今回は北東北における代表的な3つの遺跡を紹介したが、他にも興味深い遺跡が数多く点在している。時間に余裕があるなら、時代の流れに沿って遺跡を巡ってみるのも楽しいだろう。1万年にもわたり争いがなかった縄文時代。「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、農耕社会以前の人々の生活と精神文化が示す稀有な文化として、2021年7月27日、ユネスコの世界文化遺産に登録された。