
宮城県気仙沼市の南西に位置する徳仙丈山(標高711m)は、日本屈指のツツジの群生地として知られている。
例年5月中旬になると、ヤマツツジとレンゲツツジ、あわせて約50万本が一斉に咲き誇り、山全体が鮮やかな朱色に染まる。その広がりは約50万m2、東京ドーム約10個分にもおよび、日本最大級ともいえる圧倒的なスケールだ。一面に広がるツツジの景色は、まるで山そのものが燃えるように色づく、ここでしか見られない絶景だ。
ヤマツツジ
レンゲツツジ
徳仙丈山には大正初期から昭和25年(1950年)まで銅を採掘した「徳仙鉱山」があり、鉱山での火入れや山火事などで燃えた跡は屋根葺きの材料である萱の萱刈場や牧草地として利用されていた。現在、登山道として使われている道の一部は「火防線」として明治に造られたものだ。
「日本最大級のツツジの名所」と呼ばれるようになったのは、徳仙丈一帯の土壌は「黒野牧(くろのぼく)」とよばれるヤマツツジの成長に適した土であったことに加え、昭和51年(1976年)には、徳仙丈山に咲くツツジに魅了された人々が「ツツジを守り、伝えていきたい」という熱い想いと、それに共感した地域の人々の地道な保護活動がある。ツツジに絡まる蔦や下草を刈り、ツツジの育成に適した環境づくりを行うことで、日本屈指と呼ばれるほどに成長していった。
つつじが原
徳仙丈山への登山口は北(気仙沼側)と南(本吉側)の2か所。気仙沼側には、登山口から15分ほどで果てしなくツツジの赤が広がる「つつじが原」を見渡す第一展望台、ツツジと太平洋の紺碧が織りなす雄大な景色を見ることができる第二展望台がある。そこから山頂まで人の背丈を越すほどのツツジがトンネルのように咲く「つつじ街道」を通って25分程で行くことができ、南の本吉側からは、好みに合わせて2つのコースから道を選んで進むことができる。のんびり作業道コースは広い作業道を利用したゆるやかな道、登山の雰囲気を楽しみたい人は尾根道コースがおすすめだ。
つつじ街道
気仙沼側、本吉側どちらから登っても山頂までは40分程。山頂には視界を遮る高い木がなく、360度の絶景が広がる。天気のよい日には東にリアス海岸が続く太平洋、大島、西に栗駒山、南に金華山、北に室根山、北東に五葉山などが一望できる。
第二展望台からの眺め
徳仙丈山のツツジの見ごろは、例年5月中旬から下旬にかけて。裾野から山頂に向かって時期をずらして開花していくため長期にわたって楽しめるのが魅力だ。徳仙丈山のツツジを愛する人々の手によって大切に育まれてきた徳仙丈山のツツジ。今年の春は、圧巻の風景を楽しみに気仙沼に出かけてみたい。
ドローンで撮影した広大なつつじが原