小さな飾りに想いを込める!酒田の傘福

トラベル&ライフ 取材こぼれ話
2026年03月31日
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国内旅行
旅行記
2026年4-5月号『Travel&Life』の巻頭特集『Discover 東北 その一歩先へ』では、JTBが展開する国内キャンペーン「日本の旬」にちなんで、この春夏におすすめの東北の旅のプランと、北前船の寄港地として栄えた山形県酒田市の街歩きを紹介した。

山王くらぶ

酒田で訪ねたスポットのひとつが、かつて料亭として賑わった「山王くらぶ」。趣ある建物は国の有形文化財に登録されており、往時の料亭文化を今に伝えている。
各部屋の意匠は全て異なり、床の間や組子入り建具など、手の込んだ設えが目を引く。取引の内容が聞こえないように蔵を改装した蔵座敷なども印象的だ。

山王くらぶ 部屋

山王くらぶ 部屋

2階に展示されている傘福も見逃せない。酒田の傘福は、静岡県伊豆稲取地方の「雛のつるし飾り」、福岡県柳川地方の「さげもん」と並んで、「日本三大つるし飾り」と称されている。
傘福は傘の先に幕を巡らして飾り物を下げたもので、女性たちが我が子の成長や家族の健康を願った「信仰の傘福」と「宝づくしの傘福」があり、前者には災いが去る「さるっこ」、子孫繁栄を願う「ねずみ」、寝る子は育つということから「枕」など、後者には「打出の小槌」や「瓢箪」、「軍配」、「蔵の鍵」など、ユニークで愛らしい飾り物が下がり、見ていて楽しい。

傘福

傘福に下がる飾り物の数は、最大で合計が999個、1本に吊るす数は奇数と決まっている。昔から奇数は割り切れない数であるため、"縁が切れない""末永く続く"などの意味合いを持っているので縁起がいいとされている。それにあやかり、願いを込めた小さな飾り物を吊るす。先人たちが大事にしていた"想い"は今も大事に引き継がれている。

歴史ロマンに浸りながら味わうカステラ

本間美術館へも足を運んだ。北前船で財をなした豪商であり、大地主でもあった本間家四代・光道が文化10年(1813)に建築した建物「清遠閣」を美術館として活用しているもので、清遠閣と池泉回遊式庭園『鶴舞園』は庄内藩主が領内を巡視する際の休憩所として造られた。明治になると皇室や政府の要人たちを迎え、酒田の迎賓館としての役割を担っていた。戦後になり、戦争で荒廃した地元の人々の心を美術で元気にしたいと昭和22年(1947)に建物と本間家が所有する美術品を公開したのが美術館の始まりだという。

本間美術館

清遠閣

「清遠閣」の1階には喫茶室があり、大きな窓の外には風情豊かな鶴舞園を望む。庭園観賞のお供に人気なのが、「北前カステラ」。北海道産の小麦粉と北海道オホーツク産の甜菜のみから作った含蜜糖、庄内地方産の鶏卵を使って作られ、生地はしっとりとして甘さも程よい。かつて北前船は北海道に向かい、数々の逸品を運んできた。時を超えて、北海道の食材と庄内の食材が出会って生まれた一品は、北前船のロマンに想いを馳せながら味わうのにピッタリだ。

「清遠閣」の1階には喫茶室がある

北前カステラ

文=木村理恵子  写真=葛西亜理沙

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