
重箱や雑煮椀、屠蘇器など、正月を迎えるにあたって欠かせない漆器。漆器とは、木や紙などに漆を塗り重ねて作る工芸品のこと。古来から日本各地でさまざまな漆器が作られているが、その代表格として知られているのが、石川県輪島市で作られている輪島塗だ。
輪島塗 椀
輪島塗の由来は諸説あるが、一説には根来塗(ねごぬり)という漆器に由来するともいわれている。根来塗は和歌山県にある根来寺(ねごろじ)で使用されていた漆器で、色は赤や黒。堅牢であることから、日常の中で幅広く用いられてきた。その技術が輪島の地にもたらされ、独自に発展していった。
江戸時代前期である寛永7年(1630年)頃には、すでに輪島で漆器が作られていたといわれるが、現在に伝わる技術が確立されたのは、江戸時代中期、享保2年(1716年)から元文4年(1736年)のこと。それまでは、庶民の日用品として作られていたが、より質が高く、美しいものが求められ、冠婚葬祭など、特別な日に使用されるようになった。
昭和50年(1975年)には国の「伝統的工芸品」に指定。これを機に、輪島塗は優雅な装飾が施された高級漆器として発展した。
輪島塗 下地塗り工程
輪島塗の特徴は「堅牢性」と「装飾性」だといわれる。他の漆器と比べてもはるかに丈夫で使うほどに艶が増し、一生ものとして使用できる。この丈夫さの秘密は下地方法にあるという。輪島市で採れる良質な珪藻土を粉砕した「地の粉」を漆に混ぜ、何度も塗り重ねることでより強固になる。さらに100以上もの工程を経ることで、丈夫で長持ちする輪島塗が完成する。
また、ひびや欠けが生じた場合、元の職人の手によって修復することも可能。壊れたところを直すだけでなく、美しさと機能性の双方を蘇らせることができるのも、日本に伝わる価値観であるといえるだろう。
蒔絵や沈金が特徴
また、「装飾性」も輪島塗の魅力だ。中でも表面に細かい彫りを入れ、凹んだ部分に金を入れ込む沈金(ちんきん)、金粉と銀粉を用いて模様を描く蒔絵の技術はすばらしく、他にはない高級感と優美さが人々を魅了している。
輪島塗 重箱
令和6年(2024年)1月1日の能登半島地震、9月の豪雨災害によって、輪島塗関係各所が甚大な被害を受けた。あれから2年経った今、職人のほとんどが工房修繕や仮設工房などで仕事を再開しているが、休業、転業を余儀なくされている人も多いという。
また、今年は膨大なインフラ整備や公費解体業者による作業により、少しずつ観光客も増加したが、輪島は宿泊施設等が整っていない部分もあることから、金沢に宿泊しての日帰りでの滞在となっていた。今後、和倉温泉をはじめ各地域で宿泊施設が復興していくことにより、新たなにぎわいが戻ってくると考えられている。
日本が誇る伝統工芸、輪島塗。この匠の技術を継承し、さらなる発展を実現するために、いま一度、私たちができることを考えてみたい。