
スペインには「スペインで最も美しい村協会」という団体があり、現在は計122の都市部から離れた魅力あふれる村が認定を受けています。その中でも特に知られているのが、テルエル県の山間に静かにたたずむアルバラシン。今回はどこを切り取っても絵になるこの村をご紹介します。
アルバラシンがあるテルエル県はスペインの中であまり目立たない地域なのですが、実は味わい深い小さな村々が点在しています。標高1,000mを超える荒涼とした山間に抱かれたオアシスのようなアルバラシンは、その代表格です。なんでもユネスコの世界遺産の候補なのだとか。
昔の城門の向こうに見えるのは14世紀に建てられたフリアネータの家
アルバラシンの現在の人口はおよそ1,000人。ここには先史時代から人が住んでいたそうで、イスラム教徒の支配下にあった11世紀頃にタイファ(小王国)として栄え、その頃に要塞としてアルバラシン城が建てられています。キリスト教徒の時代になってからは司教座がおかれ、16世紀には内部がルネサンス様式の美しいサルバドール大聖堂が建てられました。こんな小さな村に大聖堂があるのは珍しいことです。城跡や大聖堂にはガイドツアーで入場することができます。
城跡からの美しい眺め。奥に見える城壁下の道からの眺めも素晴らしい
でも、一番の醍醐味はピンクがかった茶色の石でできた家々の間を縫う、細く入り組んだ石畳の道を散策することでしょう。何百年も前の面影を残した村の中を歩くと、映画で見る昔のヨーロッパにタイムスリップしたような感覚を覚えます。馬に乗った騎士が正面からやってきてもおかしくないような雰囲気です。この歴史的景観こそがアルバラシンの真髄なのです。次はどんな景色が見えるんだろうというわくわく感が湧きあがり、散策の足が止まりません。
情緒あふれる石畳の細道
ふと上を見上げると増築を重ねたような家々が
高いところから村を眺めるなら、山の上にある城壁に続く道を登ってみましょう。城壁に登ることもできますが、柵も何もないのでご注意を。城壁とは反対側にある城跡からの眺めも壮観です。
高所恐怖症の私は絶対登れない柵なしの城壁
城壁の外側にも古い家が立ち並ぶ
また、アルバラシンは朝、昼、夕、夜と違う顔を見せてくれるところも魅力です。私は、日が暮れて夜の漆黒が訪れる前の、空が青から群青色に変わる時間帯が一番印象に残っています。日帰りだとこの美しい時間帯を逃してしまうかもしれないので、ぜひとも1泊してのんびり過ごすことをおすすめします。村の中にはバルやレストランが何軒かあり、郷土料理を味わうことができます。また、古い建物を利用した宿泊施設も。私が泊まったホテルは、なんと城壁を建物の壁として借用している造りでした。
日没後のマヨール広場の一角。反対側には村役場がある
パンを炒めた素朴な郷土料理のミガス
正面に見えるのが城壁を拝借しているホテル
アルバラシンは蛇行するグアダラビアル川にぐるりと囲まれ、岩山の斜面に築かれた村です。川沿いには遊歩道もあるので、自然を楽しむこともできます。時間があれば村の散策だけではなく、川沿いも歩いてみてください。
川沿いの遊歩道を歩くのも楽しい
アルバラシンへのアクセスですが、本数は少ないもののテルエルとグリエゴス間を運行するバス(No.1053)で行くことができます。テルエルとアルバラシン間の所要時間は約55分。2025年9月末時点では、テルエルからアルバラシンは平日のみ1日2便(10:00、13:50発)、アルバラシンからも平日のみで1日3便(8:40、12:47、16:15発)の運行ですが、変更の可能性もありますので訪れる際は「horario albarracin moviridad」で検索の上、サイトでご確認ください。
バスが発着するテルエルも小さい町ながら見どころがあるので(世界遺産もあります)、セットでお楽しみください。テルエルへはサラゴサやバレンシアから鉄道でアクセスできます。
最後に注意事項です。アルバラシンは石畳の道ばかりで坂や階段も多いです。大きなスーツケースをゴロゴロするのは難しいので(タイヤが破損するかも・・・)、その場合は村の一番下にあるバスが通る街道沿いの宿泊施設に泊まることをおすすめします。もしくは、アルバラシン行きのバスが出るテルエルのバスターミナルに荷物預かり所があるので、そこを利用する手も。同様の理由から、歩きやすい靴は必須です。また標高が高いため冬は寒く雪が降ることもあるので、できれば春から秋に行くのがよいかと思います。
村の中は石畳の坂道や階段が多い
ぜひアルバラシンを訪ね、中世のヨーロッパにタイムスリップしたような非日常をお楽しみくださいね。
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