
さまざまな形や大きさの水田が階段状に連なる棚田が続く。棚田に水が入り、鏡のように周りの景色を映す春、稲が天を目指してすくすくと育ち、生命力あふれる夏、黄金色の稲穂が風に揺れる秋、年に数回、雪に覆われて幻想的な景色に出会える冬・・・と、季節ごとに素晴らしい景色が現れる。古き良き時代の日本の原風景を残す「大山千枚田」は、千葉県鴨川市に位置し、東京から一番近い棚田として知られている。
夏の「大山千枚田」
「大山千枚田」は、千葉県の最高峰、愛宕山(標高408.2m)の麓斜面約3.2haに大小375枚の水田が連なる棚田だ。水路やため池がなく、雨水だけで耕作を行っている日本で唯一の棚田でもある。
大山千枚田の起源は明らかにされていないが、江戸時代以前から存在していたとも考えられている。それから昭和50年ごろまでは、変わらぬ風景として地域の人たちに親しまれてきた。けれども、減反政策や過疎化、高齢化などの影響によって、棚田を手放す農家が次第に増加していった。
「大山千枚田保存会」棚田オーナー制度の田植えの様子
そこで、平成9年(1997年)に「美しい景観や豊かな生態系、田んぼとしての機能を保存したい」という有志が集まり「大山千枚田保存会」を結成。平成12年(2000年)には、全国にも先駆けて、棚田を貸し出す棚田オーナー制度を導入した。地元の人々による景観保全の気持ちと、都市に暮らす人々が米作りを体験したいというニーズがマッチし、オーナーは順調に増加していった。
「大山千枚田保存会」稲刈りの様子
さらに、「大山千枚田保存会」では、棚田、畑、周辺の森を使用した「体験活動」を実施。棚田での田植えや草取り、稲刈り、畑での収穫のほか、棚田に生息する動植物の観察、荒れた森を再生する間伐などの体験は大変好評で、今では毎年子どもを中心に7,000人ほどが棚田を訪れるようになった。
「棚田のあかり」
平成19年(2007年)には、冬の棚田を松明でライトアップするイベントを開催。以来、回を重ねるごとにイベントの規模は大きくなり、今では、休耕となる10月末から翌年の1月中旬にわたって、1万本のLEDキャンドルによるライトアップが行われている。くねくねと曲がる畝沿いに置かれたLEDキャンドルが輝く様子は圧巻。15分毎に橙・青・緑・紫と切り替わり、より幻想的な景色を生み出している。現在ライトアップイベントは、「棚田のあかり」となり、今や大山千枚田の冬の風物詩となっている。
9月下旬ごろ、棚田を彩る彼岸花
「大山千枚田」を一望できる絶景ポイントへは車またはバスでアクセスが可能だ。近くには、棚田で採れた米を使用したおにぎりやライスバーガーが味わえる古民家カフェなどもあるので、懐かしさを感じる里山の風景を前に、心安らぐ時間を過ごすことができる。
「大山千枚田」は、平成11年(1999年)、農林水産省の日本の棚田百選に認定。平成14年(2002年)には、千葉県の文化財と名勝に指定された。
秋の「大山千枚田」
※「大山千枚田」は私有地のため、関係者以外は立ち入りできない。畦に入っての撮影には「撮影許可」(有料)が必要。ドローンでの撮影は禁止。