
伊豆半島の南部に位置し、海と山の豊かな自然に恵まれた静岡県・下田。嘉永7年(1854年)、日米和親条約が締結されると、函館とともに初めての開港場となり、現在もペリーロードなど当時の様子を物語る名所が点在している。
そんな下田を代表するイベントとして知られているのが下田公園で開催されるあじさい祭だ。下田港と下田市街を見下ろす園内には、なんと約15万株300万輪ものあじさいが植えられ、毎年6月になると青や紫、ピンク色など、色とりどりの大輪の花を咲かせている。
山肌に一斉に咲くあじさい
そもそも、下田公園の地には、天正16年(1588年)に天下統一を進める豊臣秀吉に対抗するため、北条氏直が築城した下田城(鵜嶋城)があった。以来、水軍拠点となり、小田原攻めの際には地の利を生かして50日もの間籠城して、天然の要害といわれた。明治時代に公園として整備され、東京ドーム5個半といわれる敷地内には、現在も天守台跡や空堀跡などが残っている。
遊歩道が埋まるほどのあじさい
下田公園にあじさいが植えられるようになったのは、昭和42年(1967年)のことだ。下田南高等学校(現在の下田高等学校)の建設にあたり、もともと咲いていたあじさいを下田公園に移植したのが始まりといわれている。また、観光集客のために、市や温泉組合などが協力し3,000株の西洋あじさいを植樹。その後も、毎年のように新種の植樹を続けた結果、今では全国各地から多くの人が訪れる下田を代表するイベントへと成長した。
城ヶ崎
ウズあじさい
現在、「ウズあじさい」「城ヶ崎」「日向テマリ」「伊豆の華」「カシワバあじさい」「アナベル」「クレナイ」など、100種類以上もの品種が植えられているというが、実際はあじさい同士が交配を続け、細かく見るともっと多くの品種が存在していると考えられている。もしかしたら、これまで見たこともないようなあじさいに出会えるかもしれない。
開国記念碑
園内には、昭和28年(1953年)に下田開港100年を記念し建立された開国記念碑のほか、下田出身の日本写真術の祖・下岡蓮杖の碑、海を一望できる展望台などもあり、見どころも充実している。
2025年のあじさい祭は6月1日~30日に開催。期間中は、地場産物の販売や飲食店が出るほか、スタンプラリーや下田太鼓の実演なども行われ、あじさいはもちろん、下田の文化や歴史、自然をたっぷりと堪能できる。
梅雨の時期最も色づくあじさい