
フランス、ベルギー、ドイツに囲まれ、ポルトガルやイタリアからの移民が多くいるルクセンブルクは、ヨーロッパ各国の文化を採り入れた豊かな食文化で有名です。実はあまり知られていないものの、チョコレートに関しては、隣国ベルギー同様に19世紀中頃から製造を開始し、長い歴史を持っています。今回は、ルクセンブルクで若くして活躍する2人のショコラティエを紹介します。
1軒目はルクセンブルクの大公宮から歩いて5分の位置、シティセンターの一等地に位置するGenaveh(ジェナベー)。2005年に創業したこのお店は、2017年に現在のオーナーAlexandra Kahnに代替わりして以来、伝統を守りつつ、老若男女に愛されるチョコレート店として名を知られるようになりました。精製砂糖を極力使わず、カカオ本来の味を大切にしているのが特徴。2022年には、ルクセンブルク大公家の公式な御用達に選出されました。
ミルクチョコレートの原料は、ドライフルーツや蜂蜜を彷彿とさせる甘い味を持つサオトメ・プリンシペ産のカカオとパラグアイ産の砂糖。ダークチョコレートは、ナッツの風味を持ち丸みのある強さを持つペルー産のカカオを使用しています。
Alexandraのモットーの一つが持続可能なビジネス。カカオの輸入をする際には、環境に配慮した持続可能な取り組みや、農家の生活環境を向上させるような活動を行う農業組合を選んでいます。また、パッケージは全て生物分解されるコンポスト可能な原料でできています。
ルクセンブルク人はマジパン(アーモンド、卵白、砂糖を混ぜたペースト)などが入った伝統的なチョコレートを好む傾向にありますが、ルクセンブルクの住人の約半分を占める移民の人々は、新しい味や組み合わせを好む傾向にあるため、Genavehでは3ヶ月に1回、4種類ずつの季節限定フレーバーを販売します。伝統と革新が交わるチョコレートフレーバーはルクセンブルクという国を体現しているともいえるでしょう。
また、母の日、父の日、クリスマスなどの時期には、イベントに合わせた限定商品も。こうした限定商品は、Genaveh直営店でしか買えませんが、通常販売のチョコレートはAuchan、MonoPrixといった地元のスーパーでも手に入ります。Genavehのチョコレートとおすすめの組み合わせは、ルクセンブルク産のスパークリングワイン(クレモン)や、地元産のミラベルやマルベロのブランデーとのマリアージュだそう。
Genavehの店舗では、テラス席で購入したチョコレートに加えて、ホットチョコレートやムースなどを楽しむことができます。土曜日にはブランチも提供されています。また、2025年夏頃からは、ルクセンブルク西部、ステインフォートにある工場の見学も開始予定です。
2軒目は、ルクセンブルク第二の街エシュ・シュル・アルゼットに、2021年にオープンしたLola Valerius(ローラ バレリウス)。製造所とカフェが一体となったこのお店では、チョコレートが一つ一つ丁寧に作られているのをガラス越しに見学することができます。
パリで修行をし、パリと台湾で経験を積んだLolaの作るチョコレートの特徴は、宝石のように美しい見た目とフレーバーに富んだボンボンショコラ。一口サイズの小さなチョコレートの中に、何層にも重なり合うクリームやジャムが秘められています。極力地元の食材を使用し、保存料や香料を一切使わずに作られたこれらのチョコレートはまさに芸術作品。ナッツやキャラメルといった定番から季節限定のフレーバーに加え、何が入っているかお楽しみの「サプライズ」フレーバーが揃えられています。
併設されたカフェでは、ドリンクとともにボンボンショコラを食べることができる他、土曜日の朝には朝食メニューも用意されています。ホットチョコレートは砂糖抜きのビターな味なので、お好みで砂糖を加える仕様です。
ルクセンブルクを代表するこれらのショコラティエでお腹も心も満たされる体験をどうぞ!