郷土料理・アカガレイの子まぶり
郷土料理・アカガレイの子まぶり

冬の鳥取で楽しむ旬の美食旅

トラベル&ライフ グルメ探訪
2025年01月31日
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国内旅行
旅行記

鳥取の冬の味覚の王様といえば松葉ガニ(ズワイガニ)が有名だが、そのほかにも身が締まった日本海の魚介や、寒気が旨味を凝縮させる農産物など、冬の鳥取は美食の宝庫。今しか食せない究極の味を求めて、いざ旅に出よう。

産卵期限定の郷土料理・アカガレイの子まぶり

アカガレイ

9月から5月にかけて底引き網で漁獲されるアカガレイ。鳥取では家庭料理の定番として、唐揚げや煮付けで食されることが多い。特に厳寒期のこの時期は卵を抱えた子持ちカレイが最高においしい季節になる。

アカガレイの子まぶり

12月~2月の産卵期しか食べられないアカガレイの子まぶりは、主に県東部に伝わる郷土料理で、祭りや正月には欠かせないハレの日の味として親しまれてきた。新鮮なお造りに卵をまぶした素朴な料理だが、濃厚でコクのある卵が淡白な白身を引き立たせ、ご飯のおかずや酒の肴にもぴったり。

肉厚で旨味豊かな唯一無二の原木シイタケ

原木シイタケ

大人のこぶしほどもある大ぶりな原木シイタケも鳥取を代表する味覚のひとつ。鳥取県には国内で唯一の民間のきのこ学術研究機関である(一財)日本きのこセンターがあり、そこが開発した種菌を使って栽培されたのが「とっとり115」と呼ばれる原木シイタケ。その中でも傘径8cm以上、厚さ3cm以上の規格を満たしたものが「鳥取茸王」としてブランド化されている。国内で生産されるシイタケの90%以上が人口的な培地で育てる菌床栽培であるのに対し、115品種はクヌギやコナラなどの原木に種菌を植え付けて収穫するという、極めて自然に近い栽培方法で育てられる。収穫まで約2年を要し、手間もコストもかかるうえ、自然条件に左右されるため生産量も限られるが、その分時間をかけてゆっくり旨味が凝縮される。

原木椎茸とうなぎの玉締め

原木椎茸とうなぎの玉締め

干しシイタケの戻し汁と地卵で作ったウナギの白焼き入り茶碗蒸しに、ふり塩しただけのシイタケステーキがのった一品。肉厚のシイタケは思わず唸るほどジューシーで甘く、ほんのり柚子が香る茶碗蒸しと香ばしい白焼きがシイタケの味をさらに引き立てる。

原木椎茸の昆布締め

原木椎茸の昆布締め

干しシイタケを12時間かけて戻したあと、昆布で包んで蒸しあげた料理。噛んだ時の弾力とあふれ出る出汁のコク、旨味がいつまでも舌の上に残る後味が絶品。

干し原木椎茸とイノシシの味噌煮

干し原木椎茸とイノシシの味噌煮

干しシイタケとイノシシ肉からとった出汁に地元の豆味噌を加えて炊いた一品。甘みのあるイノシシの脂とシイタケの出汁が絶妙にマッチしている。

原木椎茸とアワビの天ぷら

原木椎茸とアワビの天ぷら

食べた瞬間、どちらがシイタケかアワビか戸惑うほど似た食感が楽しめる。

料亭 梅乃井

シイタケ料理を提供していただいた料亭「梅乃井」は鳥取市内で70年続く名店。店主の宮崎博士さんは"郷恩料理"として地元食材の魅力を探求、発信することに情熱を注ぎ、日本海の魚介や天然の山菜、ジビエや果物など、県産の食材を愛し、常に新しい挑戦を続けている。

*トラベル&ライフ2024年12月-2025年1月号掲載記事より

文・写真=五十嵐英之