
福島県会津地方に伝わる郷土玩具、赤べこ。頭を軽く押すと、うん、うんと、うなずくように首を振る様子はかわいらしく、海外からの観光客にも人気を集めている。
圓藏寺 写真提供=福島県観光物産交流協会
赤べこの由来には諸説あるが、中でも福島県柳津町は赤べこ発祥の地として知られている。江戸時代初期である慶長16年(1611年)に、会津地方を大地震が襲い、崖の上にある圓藏寺の本堂が被害を受けた。人々が再建を始めると、どこからか大きな赤毛の牛の群れが現れ、大きな木材を運んでくれたという。人々は手伝ってくれた牛たちを「赤べこ」と呼び、福を運ぶ使者として伝えられた。
白塗り 写真提供=やないづ張り子工房 Hitarito
赤塗り 写真提供=やないづ張り子工房 Hitarito
昔は赤べこは、①のり付け(和紙を重ね貼りする)、②型作り(和紙を木型に張り付け成型し乾燥させる)、③型切り(和紙を切り、木型を取り出す)、④背貼り(切った部分を和紙で貼り付ける)、⑤白塗り(胡粉で全体を白く塗る)、⑥赤塗り(赤い染料などをニカワで溶かしたもので塗る)、⑦絵付け(顔や模様の絵付けをする)、⑧仕上げ(胴におもりをつけた頭部をつける)という工程で作られていた。現代は作りやすいよう変更を加えながらも、一つひとつ丁寧に作られていることには変わりはない。
仕上げ 写真提供=やないづ張り子工房 Hitarito
ゆらゆらと振り子のように頭をふるのは、頭と胴体を別々に作り、首を胴体につけるときに、固定せずに首を吊るすように糸で結んでいるからだ。
ゆらゆらと首を振る赤べこ。けれども、その意味や理由については、子どもたちを飽きさせないため、首を振る本物の牛を模した、などさまざまな説があり、なぜ首を振るのかは明らかになっていない。
会津柳津駅舎情報発信交流施設「あいべこ」 写真提供=やないづ張り子工房 Hitarito
工房の様子 写真提供=やないづ張り子工房 Hitarito
やないづ張り子工房 Hitarito(ヒタリト)は、令和6年(2024年)に会津柳津駅舎情報発信交流施設「あいべこ」内にオープンした。これは、張り子工房見学や張り子の購入、絵付け体験までできる施設だ。群馬県出身の伊藤千晴さんが、柳津の雪景色やかわいらしい赤べこに魅了され、張り子づくりの技術を習得。伝統的な製法は守りつつも、頭の部分は群馬県の会社に製作協力してもらうなど、伊藤さんならではのネットワークで赤べこ作りを行っている。赤べこの背中には柳津の「や」の字をデザインするなど、柳津愛が込められた赤べこに出会うことができる。
柳津オリジナルのあかべこ 写真提供=(一社)会津柳津観光物産協会
魔除けの効果があるといわれる赤色、天然痘を現す黒い斑点。子どもたちの無病息災を願い、魔除けとして用いられてきた赤べこ。一つひとつ丁寧に手作りされる、ほのぼのとした表情やフォルムは、今でも人々の心を癒し、世代を超えて愛され続けている。
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