
オーストラリアのなかでも特に観光客の少ない西オーストラリア州ですが、州都パースから離れると更に人が少なくなります。とはいえ有名観光地はいくつか存在するので、そのぶん観光客が散らばらずに固まる傾向があります。そんな中で、ブレマーベイ(Bremer Bay)は、知る人ぞ知る自然いっぱいの秘境なのです。
州都パースから南東に約500km、南極海に面した人口約450人の小さな町、ブレマーベイ。ここは穀物農家と家畜農家が混在する地域で、住民のほとんどが農業に関わる仕事をしています。
この町にはこれといったランドマークがあるわけではないのですが、だからこそ観光客が少なく大自然を静かに満喫できるので、アウトドア好きにはたまらない町なのです。
そして、この町の最大の魅力は、真っ白なビーチと透き通るような青い海!
砂の粒子が非常に細かく、歩いていると「キュッキュ」と音の鳴る鳴き砂です。そんなビーチの上を車で走ることもできるのがこの町の特徴でもあります。周辺にはいくつか砂丘があり、車やバイクで駆け抜けるような4WDスポーツが人気です。(オーストラリアの多くのビーチでは車両の乗りこみが禁止されており、砂丘では未登録のバイクの利用が禁止されています)
海では海水浴やサーフィン、カヤック、釣りをしている人をよく見かけます。多方向にビーチが点在しているというのもブレマーベイの大きな特徴であり、その日の風向きや潮の流れによって最適なビーチが選べるのです。
これだけの透明度なので、シュノーケルやスキューバダイビングも人気のアクティビティです。この地域だからこそ見られる海洋生物も生息しており、なかでも注目なのがリーフィーシードラゴンという海藻を身にまとったようなタツノオトシゴの仲間。これは世界でもオーストラリア南西部にしか生息しておらず、とても貴重な生物です。町のダイビングショップに行けば、ここで30年以上経験のある地元ダイバーが観測ポイントへ連れて行ってくれます。
また、ブレマーベイではシャチの大群を観測できることでも有名です。この群れは南半球で最大級であり、毎年1月~4月にはシャチ観測ツアーボートが毎日出航しています。
しかし、船に乗ったり泳いだりしなくても、海洋生物が見られるのもブレマーベイの魅力。静かに海を見ていると、イルカやアシカ、鯨が見られることもあります。
海だけでなく、ハイキングやバードウォッチングを楽しめるフィッツジェラルドリバー国立公園もあります。地球上でここでしか見られない固有種の植物が多数生息しており、世界中の自然愛好家にとって楽園のような場所です。
小さな町ながら、カフェを含めて5軒のレストランがあり、ハイシーズンの夏にはフードバンも多く出店するため、食事には困りません。なかでもブレマーベイらしさを楽しめるのが、ビール醸造所の『Bremer Bay Brewing Company』です。
レストランに併設された醸造所でビールが作られており、全11種類のクラフトビールが楽しめます。全てのビールには海洋生物の名前が付けられており、店の中も外もボートをモチーフにしたデザインで、ビールサーバ―にはルアーが付いているなど、見ているだけでも楽しめるお店です。
4種類のクラフトビールを飲み比べできるコースも用意されており、それで好みの味を探すことができます。(オーストラリアでは血中アルコール度数が規定値未満であれば飲酒後も運転することは可能です)持ち帰り用として缶でも売られています。
こんな魅力たっぷりなブレマーベイですが、映画のロケ地になったことがあります。日本で2023年年末に公開された『ブルーバック あの海を見ていた』という映画です。たくさんの地元の人がエキストラとして出演しており、実は私も参加しました。映画の中の建物や大道具・小道具、景色、人々のほとんどがブレマーベイのものです。ブレマーベイに興味を持った人は、ぜひとも観てみてくださいね。