
トラベル&ライフ2025年8-9月号の巻頭特集は「洒落と粋に出会う 江戸さんぽ」と題して、日本橋とその界隈の街歩きを紹介した。街には江戸時代から愛されてきた老舗も数多く、そのひとつが、日本橋に本店を置く榮太樓總本鋪だ。創業は1818年。江戸っ子たちを虜にした看板商品「名代金鍔」は餡を包む薄い皮と円形が特徴で、日本橋本店では併設するカフェで焼きたてを味わえる。
実演販売している「名代金鍔」
榮太樓總本鋪の銘菓でもうひとつ忘れてはならないのが「甘名納糖」。こちらも江戸時代後期の安政年間から親しまれている商品で、甘納豆の元祖といわれている。原料の国産の大角豆(ささげ)は、当時は菓子の原料には向かないとされていたため安価で手に入った。そこに目をつけて、安くおいしいお菓子を作れないかと工夫を重ねて出来上がった。今でも当時の製造方法を忠実に受け継ぎ、伝統の味を守っている。「甘名納糖」は日本橋本店限定での取り扱いなので、江戸さんぽのおみやげにぴったりだ。
「甘名納糖」
コレド日本橋の4階にある「江戸料理 奈美路や」は現代の日本料理のルーツともいえる江戸時代の食文化の継承をコンセプトに誕生した食事処。店内は大きな窓から日本橋の街を望むテーブル席や、落ち着いた雰囲気の個室があり、さまざまな会食のシーンで活用できる。
同店の魅力はなんといっても江戸料理とその料理にちなんだ物語を一緒に楽しめるところ。ここでは本誌では紹介しきれなかった料理を紹介しよう。
「反本丸(へんぽんがん)」は和牛を味噌漬けにして軽く炙ったもの。江戸時代は肉食は禁止されていたが、庶民の間では食されていた。彦根藩では味噌漬けにした牛肉を将軍家にご養生の薬「反本丸」として献上していたこともあり、それにかこつけて肉を薬として味わう江戸っ子たちの姿を思い浮かべると面白い。
「反本丸」
「たまごふわふわ」はカツオだしと卵を合わせて作る江戸時代版のスフレ。当時、卵は貴重なたんぱく源であり、旅で疲れた身体と胃に優しい料理は江戸の宿場でも人気を博し、一番のおもてなしの料理でもあった。ほかにも江戸の「おかず番付」で大関を獲得した「八杯豆腐」、大山参りで人気のみやげ「よねまんじゅう」などがあり、それぞれにまつわる話を聞きながら料理を味わえば、より江戸を身近に感じることができる。
「たまごふわふわ」
「八杯豆腐」
人形町界隈の街歩きをするならぜひ立ち寄りたいのが、十思スクエア本館2階の校友会室にオープンした「十思スクエア蔦重ギャラリー」。江戸時代、ポップカルチャーの礎を築いた蔦重こと蔦屋重三郎が関わった浮世絵や黄表紙、吉原細見、狂歌絵本などが展示され、黄表紙や吉原細見などの複製本は手に取ってみることができるのが嬉しい。
吉田松陰の墓がある十思公園は隣にあり、平賀源内が投獄されていた伝馬町牢屋敷、蔦重が日本橋に構えた店「耕書堂」の跡地も近いので、合わせて立ち寄るのもおすすめ。