平井理央のスポーツ大陸探検記

Vol.2

2018.11.30

大畑大介氏に聞く!~前編~
ラグビーワールドカップ 2019™
日本で開催されるということ

10月からスタートした平井理央さんによるコラム「スポーツ大陸探検記」。
今回は、元ラグビー日本代表で、ラグビーワールドカップ 2019™日本大会アンバサダーを務める大畑大介さんに、日本代表チームの現状やW杯日本大会の意味、観戦のポイントなどをうかがいました。




平井理央さん(以下、平井):ラグビーW 杯開催まで 1 年を切りましたが、ラグビー界の盛り上がりはいかがですか。

大畑大介さん(以下、大畑) :認知度は少しずつ上がってきているなと感じています。どちらかというと、わが地元に W 杯がくるという感じで、首都圏よりも地方のほうが賑わいを感じますね。

平井:確かに東京もそうですけど、スタジアムがある開催都市ではポスターをよく目にしますね。

大畑:大分では空港から街への道中、普通の商店にもポスターを貼ってくれています。各地でもさまざまなイベントが行われているので、ラグビー熱が少しずつ高まってきているかなとは感じます。

平井:W杯は 4年に一度ということもあって、特別感があったり、スタジアムの雰囲気なども普通の大会とは違うのかなと思うのですが、選手にとってどんな位置づけですか?

大畑:ラグビー関係者にとっては全てのターゲットがW杯です。特に今回は特別で、それは大会の公式キャッチコピー「4年に一度じゃない。一生に一度だ。- ONCE IN A LIFETIME -」からも分かると思います。19年大会では、もう二度と見られないものが日本で行われるのではないかなと期待しています。

平井:現在の日本代表チームの状態はどうですか?

大畑:めちゃめちゃいいですよ。監督が代わって戦績だけ見ると、今年の方が戦績は上がっていませんが、対戦相手が全く違いますから。19年大会に向けて、世界の国々もW杯の開催地でシミュレーションを兼ねてプレイをしたい。
そうなると、声をかけると日本よりランキングが上のチームも試合に来てくれます。前回は自分たちのランキングに近いところしか対戦してくれなかったものが、W 杯を機に多くの上位チームが試合をしてくれるわけです。
前回大会で南アフリカに勝ったこともあって、あれだけのレベルのチームにも勝てるのではないかと思われる方もいますが、ラグビーは実力差がはっきり出やすい競技です。
だから、上位の国と試合をするとなかなか勝敗としての結果が残せない。そこを考えると不安はありますが、今までに対戦したことのないようなチームと対戦しているということでの経験値はものすごい。経験値に勝る財産はないので、すごく良い状態だと思います。とは言っても、この状態でいいかというとそうでもない。前回の時は、過去の日本代表があまり良い実績を残していなかったので、対戦相手も日本は星勘定に入るかな、くらいの感覚で捉えられていたわけです。

平井:言葉を悪く言えば、ナメられていたということですね。確かに、南アフリカに勝利した時には「世紀の番狂わせ」とか、「スポーツ史に残る」とか言われましたよね。

大畑:はい、ナメられていました。相手チームは日本に対しての警戒心が薄かったわけです。ですけど、前回大会であれだけの結果を残して、まして今回は開催国なので警戒心は強くなる。となると、今までとはまた違った手順で戦うことになります。

平井:マークされたなかで戦うことですね。

大畑:開催国のチームなので実力以上に相手の警戒心が高くなり、非常に戦いにくい状況になってきます。

日本代表の目標は予選突破!ライバルとなるのはスコットランド

平井:日本代表チームとしての W 杯の戦績の目標はどれくらいですか?

大畑:当然、トップ 8。予選突破がひとつのターゲットです。

平井:そのトップ 8 に進むために、日本のライバルとなってくるのはどのチームですか?

大畑:ひとつの基準となっているのがスコットランドです。前回、南アフリカ、サモア、アメリカに勝ちましたけど、スコットランドには負けました。そこでひとつ勝てなかったことで次のステージに行けなかった。そういった意味でも、ランキングからみても、アイルランドは上に抜けているので、スコットランドと最後の一枠を争うのでは。対戦スケジュールを見ても、予選の最終戦がスコットランドです。

平井:またしても、ですか!?

大畑:はい。ですから、そこがポイントになってくるのかなと。でも、日本には地の利があります。スコットランドは最終戦となる日本戦は中3日で迎えますが、日本は 1 週間、準備期間があります。W 杯という観点でいうと、サッカーの日韓W杯を思い出してほしいのですが、あの時、ヨーロッパのチームは軒並み悪い結果でした。

平井:それはどうしてでしょうか。

大畑:日本のこの独特の気候は、選手にとって疲労度やダメージが大きいんです。ワンマッチだけならある程度コンディションは作れますが、慣れない環境、慣れない気候で1カ月生活するのは相当体にダメージが残ります。そういう状況で、スコットランドは日本と対戦する。日本は自分たちの慣れた環境で試合できることを考えると、日本にはだいぶアドバンテージがあると感じます。

平井:W杯の開催期間は44日間です。それだけ聞くと、ひとつの大会としてはかなり長いですよね。

大畑:サッカーで3週間くらい、オリンピックは2週間ちょっとですから、スポーツの世界大会のイベントとしては一番期間が長いです。

平井:それだけラグビーは選手にとって一試合でのダメージが大きいということですか?

大畑:そうだと思います。僕が一番きつかったのは 2003 年のW杯で、中5日、中4日、中3日と、ドンドン期間が短くなって、もう全然疲労がとれなく、溜まっていくばかりでした。最後の試合は足が動かない、走れない状況で試合をしていました。

平井:それでも試合をしなくてはいけないという状況なんですね。

大畑:前回でいうと、日本は南アフリカ戦からスコットランドの試合まで中3日でした。ダメージが大きかったのでなかなかうまくいかない…という状況だったと思います。

平井:中3日はラグビー選手にとってダメージが大きいのですか?

大畑:大きいです。最低限5日くらいは空けてほしい。回復し始める段階での試合なので、体が全く動かないんです。

平井:一試合でのラグビー選手の消耗度ってどれくらいなのでしょうか?

大畑:ポジションによっても違いますけど、体重が一気に4kgくらい落ちる人もいます。

平井:一試合で4kg減るって、なかなか聞かないですよね。

大畑:もちろん、大きく減る選手で、ですけど。終わると顔も変わりますし、シルエットも変わります。

平井:それくらい激しいってことなんですね。

大畑:走るし、倒れるし、起きるし、ぶつかるし。ボールを放るし、蹴るし。それがワンプレイワンプレイ途切れずにずっと繰り返されるので、消耗が激しい。まして、W 杯は心にプレッシャーを感じます。普段感じないプレッシャーのなかで戦うのは、相当な疲労度があるのでダメージは大きいです。

ラグビーはチームプレイだから個人の緊張やプレッシャーを緩和できる

平井:そうすると、自国開催はすごく後押しになる反面、選手はプレッシャーをすごく感じるということでもありますよね。

大畑:でも、プレッシャーは感じたほうがいいと思います。

平井:そうなんですか!?

大畑:だって、自国で開催して、自国の人たちがみんな応援してくれる。こんな嬉しいことはないでしょ。

平井:ラガーマンは皆さんそういうマインドですか?

大畑:みんなそうです。ラグビーがいいのは、プレイヤーが1対1じゃないからプレッシャーや緊張を緩和できることです。それぞれ自分たちの役割があってチームとしてみんながいるから、そんなに大きなプレッシャーを感じない。矢面に立たされるような、すごいバッシングとかあれば別だけど。これまでは、自分たちが一生懸命やっていると思いながらも注目度が低かった。それが、自分たちが出した結果でこれだけ注目度が上がり、評価されたっていう感覚の方が今は大きい。だから、選手たちはプレッシャーよりもやりがいを感じていると思います。

平井:ちょうど今の現役の選手は注目度というところで苦労した経験があるうえで、前回からの“今”を感じている世代だから、それを嬉しいと感じられるんでしょうね。

大畑:それに 2019 年のW杯日本開催は2009年に決まりました。今の選手たちでいうと、代表でプレイしたいというイメージを持ち始めた頃に、自分たちの目標は 2019 年W杯日本大会の開催が明確にあったはずです。そういった意味では、きちんと自分たちのなかでシミュレーションができていると思います。

平井:2019 年大会は2009年から始まっているんですね。

大畑:そうなんです。だから、そこでプレイできる喜びの方が大きいと思います。前回大会で自分たちがやるべきことをしたことで、世の中の人が自分たちのことを見てくれるということを実感しました。その成功体験しか選手にはないので、プレッシャーに対してネガティブなイメージは持っていないと思います。

平井:そうすると、2019年のW杯では日本の中でラグビーという競技をより高みにするために選手の皆さんは頑張るという面もありそうですね。

大畑:実際、前回大会で自分たちの足跡をこれだけ多くの人が認めてくれるんだと感じたので、次は俺たちの番だ!というものも当然ありますし、W杯で世界の中での日本のラグビーのポジションを上げることができれば、もっともっと注目してくれるんじゃないかというところにつながってくると思います。それと、今大会の意味は、日本国内のラグビーだけではありません。今まで W 杯が行われたのはラグビーの強豪国といわれる地域で、強豪国の地域から初めて飛び出した大会が今回です。

平井:アジアで初の開催ですよね。

大畑:この大会の成功いかんによっては、じゃぁ次は北米とか、いろんなところに W 杯を広げていくことができ、ラグビーがよりグローバルなスポーツになるかもしれない。そういうことも含めて大きな指針になる大会なんです。逆にここで失敗すると、やっぱり戻ったほうがいいとなると思うし、ラグビーが本当の意味でグローバルなスポーツなんだと評価してもらえるかどうかの非常に重要な大会になってくると思います。

平井:日本だけじゃなくてアジア、そして世界のラグビー界にとって大きな意味のある W杯になりますね。

大畑:W杯の成功はやはり、自国のチームがどうなるかが一番大きい。成績がいいとその地域、その国も盛り上がり、W杯自体の盛り上がりに繋がり、選手たちのテンションは自ずと上がります。だから、やっぱりこの大会で一番重要なのは 9月20日のオープニングゲームですね。



期待が膨らむ 2019 年のラグビーワールドカップ。観戦の楽しみ方や見どころは、次回、後編でご紹介させていただきます。


大畑大介氏

Profile

大畑 大介

元ラグビー日本代表
神戸製鋼コベルコスティーラーズ アンバサダー
東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員会委員
ラグビーW杯2019 アンバサダー
■生年月日/出身:1975年11月11日/大阪府大阪市出身
■出身校:東海大学付属仰星高等学校/京都産業大学
■所属:神戸製鋼→ノーザンサバーブス(豪)→モンフェラン(仏)→神戸製鋼コベルコスティーラーズ
■所属事務所:株式会社ディンゴ  http://dingo.jpn.com/

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平井理央

Profile

平井理央

1982年11月15日、東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2005年フジテレビ入社。「すぽると!」のキャスターを務め、北京、バンクーバー、ロンドン五輪などの国際大会の現地中継等、スポーツ報道に携わる。2013年より、フリーで活動中。趣味はカメラとランニング。著書に「楽しく、走る。」(新潮社)がある。