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JTB交流文化賞

第12回受賞作品発表

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交流文化賞 ジュニア体験部門

第11回 JTB交流文化賞 受賞・入選作品

中学生の部

最優秀賞

バッハに近づけた春

牧野 はるか

春休みに海外旅行に行くことを楽しみに、私は中学受験の勉強を頑張った。私は、三歳からヴァイオリンを始めた。クラシック音楽が好きな父の影響で物心ついた時から、私の隣には楽器があった。音楽を愛する父は私と弟に西洋音楽を生みだしたヨーロッパを見せたいということで、行き先はドイツに決まった。ドイツはバッハ、ベートーベン、メンデルスゾーンといった素晴らしい作曲家を生み出した国だ。

ドイツの朝は、いつも雨だった。ホテルの黒板にはその日の天気予報が、親切に描かれていた。一日目、その黒板にびっくりした。おかしなことに、晴れ、曇り、雨、嵐の絵が描かれていたのだ。日本の天気予報は、晴れと曇り、曇りと雨など絵は多くても二つだったのに、何と四つも描かれている。天気のフルコースだ。家族で「これって予報になっていないよね」と笑ったが、一日目でその予報の正確さがわかった。建物の中に入って出ると、天気がころっと変わっていた。ドイツ人は慣れているのか、大雨でも嵐でもひょいっとフードをかぶり、普通に歩く。どの天気でも動じないのだ。どしっとした懐の広さを感じた。母と弟の折りたたみ傘は無残にも折れてしまった。しかし、そんなにショックをうけなかった。傘をさした私たちが悪いのだ。旅行の終わりごろには、私たちは嵐になっても傘をささずに平気で歩くようになった。そう嵐はいずれ終わる。ここはドイツだからだ。

ライプツィヒ中央駅から歩いて十五分。マルクト広場を抜け、バッハが音楽監督をしていたトーマス教会に着いた。中に入ると、ひんやりした空気のなか、オーケストラと合唱の調べが流れていた。天井が高く、音が伸び澄んだ響きが私の身体を包んでくれた。ちょうどリハーサルの最中だった。現代のオーケストラと違い、バッハ時代の音色だった。紅い曲線模様で飾られた白く高い天井、細長い教会の壁面を飾る美しいステンドガラス、重厚に輝くパイプオルガン、演奏するオーケストラ、教会をデッサンしている人、そして、静かに耳を傾ける人々がいた。一つの絵画のような景色がそこにはあった。そのことに気付いた時は、時が止まっているような感じがした。西洋の芸術はこういう空間から生み出されているのだ。

周りの人たちのように私も石の階段に座って、オーケストラのリハーサルを聴き続けた。圧倒的な芸術がそこにはあり、バロック時代へタイムスリップした。

バッハは、トーマス教会に住み、たくさんの曲を作曲し、指揮をしていた。この空間の中では人に伝える言葉は、音楽だったのだ。バッハは、人々に伝えたかったことを曲に表した。バッハにとって、作曲は私が考えていた以上に日常そのものだった。私たちが言葉を発するような、日記を書くような自然な営みだったと思う。「音楽の父」と呼ばれる偉大な作曲家、バッハの日常がわかったのだ。その嬉しさに私は興奮した。

私は、毎年バッハにお世話になっている。クラシック音楽を勉強している人にとって、バッハは特別な存在だ。私は、年長から毎年コンクールに出場している。いい結果の時も残念な時もある。バッハは、他の作曲家に比べると、コンクールの課題曲になることが、特に多い。バッハの曲は、技術も表現も本当に難しく、演奏者の実力をはかるのに適しているからだ。旋律を感じているか、バロック奏法で演奏できているか、正確な音程で弾くことができているか、全ての音に意味があることを理解できているか…。弾けば弾くほど難しさがわかるのが、バッハだ。だから、バッハを得意だと言える人は、私も含めて周りにはあまりいない。

六月にコンクールがあった。課題曲はバッハの「無伴奏パルティータ二番アルマンド」高音と低音のかけあいが難しく、力強く美しい曲だ。トーマス教会の神々しい響きを思い出して練習した。私の中で、バッハの世界に行ったということが、自信になっていた。いつも厳しい先生が、
「これだけ上手に弾けるから、失敗をやらかさないように」
と言ってくださった。先生の言葉も私の力になった。本番では、バッハが伝えたいことを伝えられた気がした。結果は、予選通過。ガッツポーズだ。

曲を演奏するときに、ドイツ旅行のことを思い浮かべる。ffからppへ変わるフレーズでは、天気が突然急変することを。優美なメロディーでは、美しいサンスーシ宮殿を。力強いフレーズでは、ブランデンブルク門を。もう一度、いや、これから何回もヨーロッパに行きたい。その土地に行くと、初めてわかること、感じることがたくさんあるからだ。心の引き出しを増やし、作曲者がその曲に込めた深い想いを人に伝えることができる演奏家になりたい。

あらましと評価のポイント
【あらまし】

幼少からヴァイオリンを弾いている筆者は、バッハが音楽監督を務めた教会でオーケストラの演奏を聴き、音楽が暮らしに根付いていることを知る。バッハの時代にタイムスリップしたような体験を通して、自信をもって演奏に臨むことができるようになった。

【評価のポイント】

実際に現地を訪ねてバッハと「交流」できたことが、演奏の自信につながっており、旅というものの価値がよく伝わる内容だった。筆者がバッハの気持ちになれたことが読み取れる、「バッハにとって作曲は日記を書くような自然な営み」という描写が素晴らしい。筆者にとって貴重な良い旅になった。タイトルも良い。

受賞作品

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