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JTB交流文化賞

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交流文化賞 ジュニア体験部門

第9回 JTB交流文化賞 受賞・入選作品

中学生の部

優秀賞

特別な場所

栗田 優輝

「優輝、ここ、ここ。」
テレビ画面を指さしながら僕を呼ぶ。そこには、日本アルプスの立山が映っていた。僕も思わず画面にくぎ付けになる。新緑の緑の木々が色鮮やかに森を作っている。キラキラと光を反射させながら湖がその森を映している。水面が透明だ。自然を讃えたような景色だ。
その上の方に、険しく藍色の肌に白い雪をかぶった立山連峰の頂きが見えた。僕は、画面の向こうに自分が見た景色を重ね合わせていた。僕達は、去年の5月に祖父母たちと一緒に立山雪の谷ウォーキングのツアーに参加した。それ以来祖母は、立山がテレビに映る度に、その時の感動や興味を甦らせている。立山は祖母にとって長年、行きたくてもいけなかった特別な所だった。或る日、母が、
「お母さん、今度、立山に行くからね」
と、さらりと言った。祖母は驚いた。みんなも驚いた。そしてとても喜んだ。祖母は何度も、どれだけ行きたかったかを話続けた。僕も期待で胸を膨らませた。家族中がそわそわしていた。一番喜んでいた祖母が暫く経って、無理だと言い始めた。祖父も言い始めた。祖母は左膝が悪く長時間歩けなかったし、祖父は、手術をした後だったからだ。僕は、その不安を簡単に考え、解ろうとしなかった。

母が、祖母を買い物に誘った。靴屋だった。その靴屋は何度も色んな角度から足を計測して靴を作る店だった。祖母の足は左足が特に曲がっていた。しかも、足の裏がひこずるために硬い踵のようになっていた。母も僕も初めて知った。祖父も足に合った靴を買った。
「無理なのにどうしても子供が立山に連れて行くってしょうがないんです」
と店員さんに話す顔は、とても嬉しそうで
「お幸せですね。楽しみですね」
と言われた。その顔は、本当に幸せそうだった。買い物が旅行へ意欲を上げた日だった。次の日から、少しでも足を動かすんだと、祖母が散歩に出るようになった。そして少しずつ距離を伸ばしていった。時々、母も一緒に歩くようになった。ラジオ体操もした。立山という目標が頑張りを引き出していた。体全体の元気も呼び込んでいるようだった。

いよいよ出発の日だ。広島から名古屋までそれから松本まで行った。駅で、午前中雪で閉鎖されていた上高地が、午後から山開きの許可がおりたことを知らされた。幸先のよいスタートだ。第一の目標のネイチャーガイドと上高地・大正池の散歩の始まりだ。まずは、雪深い山道からだ。僕の田舎の山の風景とまるで違う。空気がピンと張りつめ西洋画の中の神聖な森のようだった。只只感動した。すぐに、僕達だけになった。僕達の足音と、息使いだけが響く。祖父は、目の前の木々に手を添え愛おしそうに見上げていた。一生懸命歩いて、大正池に出た。池の綺麗さに思わず声を上げた。別世界だった。時間を忘れかけた頃、河童橋に辿り着いた。そこからの眺めは一層の素晴らしさだった。祖父も祖母も一言も弱音を吐かなかった。次の日は、朝一から関電トンネルトロリーバスに乗った。バスぎりぎりのトンネルに、よく掘ったなあと感心した。黒部ダムへ降りる急階段はダムへ吸い込まれそうだった。ダムのスケールは、一目で見きれない。足元を抉るように地下に伸びる壁は寒気がした。僕たちは歓声を上げるばかりだ。黒部ケーブルカーの車体の角度にびっくり。立山ロープウェイはロープ一本で繋がっていた。360度の景色は圧巻で、あのダイナミックな黒部ダムが、雪山の間に模型のように見えた。一気に登っているのが分かる。立山のトロリーバスに乗り、ついに室堂に着いた。ボランティアガイドの人と、いざ雪の大谷ウォークへ。天気が良くて最高だ。真っ白な雪が輝いている。この山は、四季それぞれに全く違った良さがあるという。ライチョウを、見つけられない。残念だ。10メートルにもなる雪の谷は、僕の頭の遥か上を真っ直ぐにそそり立っていた。祖父が壁を叩きながら見上げ、雪のかけらを口に入れた。雪の結晶が違うと感動していた。僕は、究極の雪の芸術だと思った。自然の優しさや厳しさ等話も聞いた。僕達は、体全体で自然の素晴らしさを感じる事が出来た。自然の中では、人間は小さいと感じた。自然はやはり人の手の中には入らない物だと思った。前日の旅行者の人達は、吹雪で雪の谷へは出られなかったそうだ。それを聞いた祖母は、頑張ったご褒美をもらったと感謝していた。疲れているのに心が清々しい。

旅行の後も祖父母は、毎日、ウォーキングに行っている。決して体が治ったわけではないが旅の感動から心の元気を貰ったようだ。僕達はみんな再び立山に行きたいと思った。家族の目標だ。祖母や祖父はその日に向かって頑張っている。僕も頑張っている。だからきっと僕達にご褒美の日がやって来ると思う。

あらましと評価のポイント

●立山は祖母にとって長年行きたくても行けなかった特別な場所。病後の祖父と足を悪くしている祖母は、立山への家族旅行を控え、楽しみと同時に強い不安を覚えていたが、皆で靴を買いに行ったことをきっかけに、旅行への意欲をわかす。旅行後もウォーキングを続け、旅から元気をもらい、再び立山に行きたいとがんばっている。
●孫との旅行に希望を持ってトレーニングして元気になっている様子、準備の段階から「旅」が始まり、自身も成長していく様子がよく描かれている。祖父母と孫の関係がポイント。これからの旅の一つの「かたち」である。

受賞作品

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