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感動!幸せ!秋田への旅
鈴木 美紀

(イメージ)この夏、わが家は急に秋田県に旅行に行くことになった。夏休みの旅行は、例年早くから計画を立て、父が手配をしている。しかし、昨年今年と両親の気持ちが乗らないのだ。

私には四つ上の姉と三つ上の兄、そして一つ下の妹がいる。兄は重度の自閉症で、妹は発達障害を抱えている。この妹というのが、取り分け大のお手かけ好きだ。夏休み最後の土日は、東松島での障害児家族キャンプにも参加していた。私たちにとって楽しみなイベントだったが、それも昨年から中止。施設が津波で壊滅してしまったからだ。妹にとって、今年も気の毒な夏休みになるなあ、と思っていた。

私は仕方ないと割り切っていたが、やはり両親は妹の喜ぶ顔が見たかったらしい。夏休みに入ってからの七月末、秋田県のコテージにキャンセルが入って空いていたからと、すぐに予約を入れたのだ。山の中にあるコテージで、テニスコートはあるけどテレビがないらしい。今時テレビがないなんて珍しいと思いつつ、私はそれでも構わないと言った。兄と妹だって支障はないはず。しかし姉だけは「えーっ。テレビがないなんて暇じゃない。山で何をして過ごすわけ?」と不満げだった。それを受けて母は、「震災でテレビが何日も見られなかったのに、何とか過ごせたのよ。たった一日くらい!」と、ばっきり切っていた。

当日はあいにく天気に恵まれなかったが、それでも晴れ間でテニスをしたり、散歩をしたりした。すごく晴れていたのに急に雨がザーッと降り出したりして、その度に窓を開けたり閉めたり。エアコンもつけたり消したりして、少しでも省エネに貢献。できるだけ、自然の気持ちのよい空気を浴びるようにした。

それにしても、山の天候は気まぐれだ。雨が上がったのを見計らって、夜にハチミツ入りのビンをセットした。せっかく山に来たのだからカブト虫を捕まえよう、と安易に考えたのだ。この一帯は街灯がないので、まるで山奥の一軒家だ。だから、玄関の電灯や部屋からもれる明かりに集まってくる虫が多いのだ。玄関や窓を開けると、すぐに虫が部屋に入ってくる有様なのだ。

相変わらず雨が降ったり止んだりだったが、合間にみんなで花火をした。久しぶりに、家族で歓声をあげながら楽しんだ。普通は夜に、外で大きな声を出すなんてできない。特に、奇声をあげる兄の声は近所迷惑になるからと、昼間さえ人一倍気をつけている。それが、ここでは人目を気にせず自然体でいられるのだ。兄はもちろん、家族みんながリラックス。しかも、家族で一つのことをして笑えるとは、何て幸せなことだろう。いつもと違う新鮮な空間は、テレビがなくても十分満足できることを証明した。

翌朝、私たちはコテージを出て男鹿半島に向かった。かなりの大雨になるとの予報だったが、朝は大きな太陽が出ていた。「普段の行いがいいから、晴れたわ」なんて母は言ったが、カブト虫の捕獲が失敗に終わったことが分かると、首をかしげていた。小さな虫一つ罠にかからず、雨水がたまっただけだったので、無理があったと思うのだが―。 男鹿半島に着くと、空は抜けるような青色になり、私たちを出迎えてくれた。私たちは果てしなく広がる海をじーっと見つめた。波が岩にぶつかり、勢いよくしぶきを飛び散らせる。私たちのところまで、迫ってきそうな気配さえする。家族六人横一列でくっついて見ていても、海に吸い込まれそうになる。「これが海。三陸海岸と同じ海」雄大で壮観な男鹿半島の海は、迫力ありながら温かい感じがした。

若い頃サーフィンをしていた両親は、この先海で楽しむことはないし、一生海を見なくていいと言っていた。しかし、この大自然を前に「海はいいなあ」を連発。自然を恨まず、受け入れるしかない、と思ったのだろう。私もこの景色を目の当たりにした瞬間、自然の素晴らしさに感動。波が寄せる度に、心が洗われていくようだった。 私は隣にいる兄と妹の手を握り、家族がいつまでも仲良しでいられるよう海の神に祈った。潮の香りが強くなり、私たちを優しく包んでいるような気がした。

評価のポイント

自閉症の兄、発達障害の妹がいる家族での旅行。秋田の山あいのコテージで、周囲を気にせず家族が自然体でいることの幸せ。震災以降、海を避けていた家族が大自然の海を目の前にして、静かに感動を分かち合った幸せ。筆者の体験から、大切な家族の絆を教えてくれる作品。



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