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“過剰的親切・チャイナ”深夜の北京西駅での出来事
上浦 未来
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  中国では、英語が通じない。
  噂には聞いていたが、それは本当だった。中国=チャイナ、こんにちは=ハロー。それすら、わかっているのかどうかも、怪しいほど英語が通じない。ともかく会話は中国語。こちらが中国語がわからず、「チャイニーズ、ノー」、と簡単な英語で言ってみても、いくら話せない、と顔や身振りでアピールしてみても、全然ダメ。この世には、中国語以外の言語なんて一切存在していないかのように、どんどんと中国語で話しかけられる。けれど、言語を始めとする、中国人の過剰なまでの押しの強さに、急激に惹かれていく。

  2010年6月、わたしは10日間の中国ひとり旅をしていた。
  北京市内で数日間を過ごし、シルクロードの起点・西安へ寝台列車で移動、再び北京へ戻ってくる、と言う予定だった。けれど、北京から西安の移動で、当日の夜、チケット売り場で空席を聞いてみると、なんと満席。予約をしなかったのが悪く、朝出発の切符しか取れなかった。今夜どうしようかと思いつつも、これからホテルを探すのも億劫で、電車を待つ人が多く集まる、室内の一角にバックパックを降ろし、待機することに決める。
  すると、旅行者が珍しいのか、女のひとり旅が珍しいのか、次々に人が寄ってくる。最初は、日本で言う警察官のような公安の人々が、つかつかと近寄って来て、あーだこーだと中国語で話しかけられ、気がつくと、ゴルフカートのような室内用パトカーが隣に来ていて、乗せられた。どこへ連れて行かれるのか、ドキドキしていると、階段付近で降ろされ、数名の公安に取り囲まれる。「いっぱい人はいるのになんで私だけ」、と思っていると、どうやら危ないからホテルに泊まりなさい、と外国人である私を心配してくれているだけのようだった。何度も説得されるが、結局、ホテルの手配は自分でしなければいけないので、その場から逃亡。バックパックを抱え、再び同じ場所へと戻った。
  ようやくゆっくりできると思い、バックパックを横に倒し、もたれかかっていると、さっき立ち会っていた公安のひとりに見つかる。まずい。思わず、シーッと指を立て、黙ってて、とお願いすると、またもつかつかと近寄ってきた。どうしようかと思っていると、中国語でどんどん話しかけられる。けれど、さっぱりわからないので、わからない、という表情をしてみる。にもかかわらず、中国語攻撃は延々と続き、話が止まらない。まるで、相手が中国人のようにぺらぺらと話し続ける。始めは、何か聞き取り調査のようなものかと思い、集中して内容をつかもうと頑張っていたが、公安として、と言うわけではなく、次第に個人的にただの世間話をしているようだ、ということがわかってきて、相手をするのが面倒くさくなってくる。
  ひっそりと過ごしたいが、この公安がいるせいで、周りの見物客があちこちから集まってきて、全然落ち着かない。彼は私の困惑などものともせず、ずっと中国語で話し続けている。ノートに、「中国語不可」とか「理解難」とか、そろそろひとりになりたい、開放してほしい、という意味を込め「欲独居」などの漢字を書いてみるものの、全然通じなかったようで、微塵も気にしていない様子。2時間近く話を聞こうと努力したが、徐々に、なんでこんなに一方的なんだと腹が立ってきた。眠さも入り混じり、「ひとりにしてー!」と、本気で叫び、立ち上がって、大暴れする。

  すると、ようやく私が何か怒っているらしい、という事が伝わったのか、みんなどこかへ消えて行った。けれど、それもつかの間、あれだけ本気で怒って見せたのに、すぐにあの場にいたひとりが、笑いながら戻ってきた。そして、おもむろに新聞紙を渡された。何だろう、と思っていると、床を指差す。どうやら、床に敷け、ということらしい。確かに、周りの中国人も何かしら床に敷いて、過ごしている人ばかり。あまりにも思いがけないお恵みに、なんだか怒りも忘れ、笑ってしまう。
  2人で筆談で話していると、再びさっきの公安の人も戻ってきた。そして、話しの輪に入ると、次々に人が集まりだし、またさっきと同じ状態に。さすがに、もうそろそろ本気でそっとしておいてほしいと思い、黙って場所を移動した。


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